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大久保“大逆転”W杯切符!ザック監督、好調さ買った!

[ 2014年5月13日 05:30 ]

W杯トロフィーのパネルを抱き、満面の笑みを浮かべる大久保

 大久保が切り札だ。日本協会は12日、6月12日に開幕するW杯ブラジル大会に出場する日本代表メンバー23人を発表し、FW大久保嘉人(31=川崎F)がサプライズ選出された。12年2月24日のアイスランド戦を最後に代表から遠ざかっていたが、大逆転でのメンバー入り。2大会連続のW杯出場を勝ち取ったベテランが日本代表のジョーカーとなる。

 その瞬間、チームバスは絶叫に包まれた。ACL、FCソウル戦(14日)に向けて羽田空港に移動する車中で、大久保は運命の時を迎えた。メンバー発表の16人目。FW登録で最初に名前が読み上げられると、仲間から一斉に「ウオ~」と雄叫びが上がった。「皆と一緒に吠えました。サプライズは最後だと思っていたので呼ばれるのが早くて驚いた」。隣では携帯電話で動画を撮影していた弟分、デカモリシこと森島が「感動した!」と涙ぐんでいた。

 代表復帰は12年2月24日のアイスランド戦以来、808日ぶり。試合は不発のまま前半で途中交代したが、約2年3カ月で見事に進化を遂げた。ザッケローニ監督は大久保について「経験、ひらめき、相手に的を絞らせない意外性がある。すでに33歳(実際は31歳)だが、フィジカル面もバリバリの印象」と評した。

 一発勝負のW杯。指揮官は母国イタリアで“救世主”と呼ばれたある男とイメージを重ねている。それは90年W杯イタリア大会開幕直前にイタリア代表デビューを飾り、サブから先発へ昇格、そして得点王に輝いたスキラッチだ。これまでも「調子のいい選手を連れて行くのはいい影響がある」と語っており、今、最も勢いのある男にその役割を期待した。

 もっともゴール量産は勢いだけではない。きっかけは13年1月の神戸から川崎Fへの移籍。風間監督から「FWはあまり動くな」とアドバイスを受けた。前線でボールを待ち、パスの出し手が顔を上げた瞬間にコンマ数秒の駆け引きでマークを外す理論。無駄な動きを減らして質を上げたことでゴール前での集中力が増した。昨季Jリーグ得点王に輝くと、今季も日本人最多8得点。「自信はある。今の代表にはフィニッシュの怖さがない。自分が入ってワクワクさせるようなプレーをしたい」と力を込めた。

 W杯で重要となるのが初戦のコートジボワール。タレントぞろいの強敵だが、一方で守備ではマークがルーズ。ジョーカーとしての役割を期待される大久保の動きだしと敏しょう性は日本最大の武器となる。さらに屈強タイプがそろう2戦目のギリシャに対しても大久保の一瞬のスピードは有効。南アフリカ大会では主に2列目の左だったが、1トップも含め「どこに入ってもやれる」と話すように、日本を勢いづかせるにはうってつけだ。

 この日は61歳で他界した父・克博さんの一周忌。2大会連続W杯出場の約束を果たし「生きていたら“嘉人、よかったな”と言ってくれると思う」と感慨深げだった。本田、長友らが公言するW杯制覇にも「優勝を目指してチームが一つにならないといけない」と同調。サプライズ選出となったが、この男がブラジルで活躍しても何の驚きもない。

 ▽90年W杯イタリア大会のサルバトーレ・スキラッチ ユベントスでの活躍が認められ、W杯開幕まで約2カ月に迫った90年3月31日のスイス戦に、25歳で代表初招集。招集たった1度ながら 本番でも代表入りした。選出は賭けの意味もあって、くじから「トト」との愛称。しかし初戦のオーストリア戦は途中出場で決勝弾を決める活躍。その後は不調のFWビアリに代わって先発に定着し、大会7試合で計6ゴールを決めて得点王に輝いた。イタリアを3位に導き、名前のサルバトーレの意味通り「救世主」となった。

 

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