藤井王将 王将戦初出場から6局目で初黒星 “2時間25分”の長考も「思わしい変化が見つからなかった」

[ 2023年1月23日 05:28 ]

第72期ALSOK杯王将戦7番勝負第2局第2日 ( 2023年1月22日    大阪府高槻市 摂津峡花の里温泉・山水館 )

伸びをする藤井王将。王将戦初出場から6局目で初の黒星を喫した
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 初防衛を目指す藤井聡太王将(20)が敗れ、1勝1敗のタイになった。前期からの7番勝負での5連勝が途切れ、初出場から6局目での黒星は王将戦史上最も遅い記録だった。昼食休憩前後、実質2時間25分考えた勝負手も実らなかった。

 2日制の疲労が藤井の全身を包む。正座の上半身から力感がなくなった。最後は10手連続王手も実らず、羽生の101手目▲4八香を見て王将戦7番勝負で初めて投了を告げた。

 「(77手目)▲5七銀打と受けられてはっきりしてしまった。2日目は考えても思わしい変化が見つからなかった」

 前期、渡辺明王将から4勝0敗のストレートで奪取した。さらに今期第1局の勝利で、この敗戦が王将戦7番勝負6局目にして初黒星だった。

 王将戦史上、最も遅い初黒星。これまでは1985年度の第35期、初出場した中村修九段が中原誠王将に挑んで開幕3連勝後、第4局で初めて敗れたのが記録だった。今期、スコアは1勝1敗の五分へ戻ったが、負けて強しを印象づけた。

 昼食休憩時の本紙取材。「(局面は)もう終盤なので…」に続く、次の言葉が出てこなかった。「今日はこれくらいでいいでしょうか?」と前期から出場する7番勝負で初めて、取材終了を自ら提案した。優劣不明。佳境の真っただ中にある局面を物語るようだった。

 昼食休憩が1時間、そして対局再開後も盤上へ手が伸びない。74手目△7七銀(第2図)は午後2時26分の着手だった。

 73手目が指された午後0時1分から記録上1時間25分の長考。手番を握って昼食休憩に入り、高槻野菜たっぷりソース焼きそばを口に運びながら実質2時間25分考えたことになる。

 前期の同じ高槻対局。その第2局1日目に飛び出した2時間28分には及ばないが自己最長級の長考。着手後、羽生の残り3時間24分に対し、1時間1分と2時間以上の差がついた。直後、決定打となる▲5七銀打を回避するすべは見つけられなかった。昼食休憩時から、優劣不明どころか非勢を悟っていたのだろうか。

 「第3局がすぐ来週にある。よい状態で臨めるようにしたい」。これまで11度のタイトル戦全てを制し、40勝9敗の内訳には連敗がまだない。継続中の藤井神話にも従い、万全に整える。(筒崎 嘉一)

 ≪△7八飛 藤井のワナも羽生読み勝ち≫終局後の感想戦では藤井の78手目△7八飛への質問が出た。棋士らが集う控室では「大駒は離して打て」と△9八飛が検討されており、この一手に興味が集まった。「(羽生王に)結果的に2筋へ逃げ込まれるわけですが、5~6筋へ逃がすのを防いでいます」と藤井は△7八飛の狙いを説明。直後、本譜の▲4六歩ではなく▲6九銀などと自陣を固めれば△6六金という逆転打の狙いもあった。△5七角成からの詰めろで、他の変化にも詰みがある。巡らせたワナを、正着を指した羽生の読みが上回った。

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