冨永愛 「大奥」徳川吉宗役で時代劇に初挑戦 「俳優業はひよっこなので胃が痛い」

[ 2023年1月10日 08:16 ]

ドラマ「大奥」で徳川吉宗を演じる冨永愛(C)NHK
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 【牧 元一の孤人焦点】モデルで俳優の冨永愛(40)が10日にスタートするNHKのドラマ「大奥」(火曜後10・00)で、江戸幕府8代将軍・徳川吉宗を演じる。よしながふみさんの人気漫画が原作で、男性と女性が逆転した大奥の物語。時代劇初挑戦の冨永はインタビューに応じ「いろいろな方がこれまで吉宗を演じて来ている中で『冨永愛の吉宗は良かった』と言ってもらえれば本望です」と語った。

 時代劇出演は、実は役者としての目標だった。

 「元々、歴史小説が好きでした。10代の頃に家族旅行をした時、冊子で白虎隊の話を読んで衝撃を受けたのがきっかけでした。それからモデルになって海外に行って、外国の若いモデルたちが自分の国のことをよく知っているのに、自分が日本の歴史や文化をよく知らないことに恥ずかしさを覚えました。まず着物の着付けを習って、最初に読んだ司馬遼太郎さんの『坂の上の雲』が面白くて歴史小説にはまりました。俳優を始めて、時代劇に出演することが私の自然な願望でした」

 目標に向かって以前から殺陣や乗馬の練習をしていた。

 「時代劇でどんな役を演じられるか考えた時、まず、女性の役では着物の丈が足りないだろうと思いました(笑)。男性の役、もしくは見かけが男性で実は女性の役ならできるだろうと考えました。だから、殺陣を習い始めて、女性の殺陣ではなく男性の殺陣を練習しました。元々、乗馬はできたのですが、時代劇の馬の乗り方も練習しました」

 そこに届いた「大奥」への出演依頼。配役を知らされる前に、よしながふみさんの原作を読んだ。

 「男女逆転の話で将軍が女性なので、最初は違和感がありました。でも、読み進めるうちに、実はこれは本当に起きたことなのではないかと思うくらいのリアルさを感じました。よしながふみさんは凄いです。吉宗はパブリックイメージの冨永愛に似ていると思いました。吉宗が英断するように、冨永愛もキリッとスパッとやりそうですから(笑)。吉宗役のお話をいただいて、人物像を知るために伝記や文献、小説を読みました。吉宗が生まれ育った和歌山にも行って、和歌山城も見学しました」

 吉宗は10日放送の第1話から登場。大奥で旗本の息子・水野祐之進(中島裕翔)を見初める。

 「いちばん難しかったのは歩き方です。私はヒールを履いてランウエイを歩いていますが、それとは全く違うので、監督さんや所作の先生と相談しながら歩き方を決めました。私は、歩き方は生きざまだと思っています。歩き方に、その人の性格や人物像が表れるからです。あの時代の歩き方を習得するのも大変でしたが、吉宗は武術が達者だったので、武術が達者な人のように歩かなくてはいけません。つま先を使わず、常に重心が真ん中にあって、歩幅は大きめの感じで、殺陣を習っていたことが生きたと思います。楽しかったのは、乗馬のシーンです。私が乗馬を習っていたことを知ってわざわざ入れてくれて、脚本と監督さんに感謝しています。トップスピードで走りました」

 モデル業を続ける中、これまで映画「R100」(2013年)やドラマ「グランメゾン★東京」(19年)などに出演してきた。

 「モデルは言葉のない表現者です。言葉がないからこそ難しい面があります。人が会話で相手の感情を受け取る時、8割くらいはボディーランゲージからだと言われています。だから、表現のことを考えると、俳優をやる上でも、モデルをやっていて良かったと思います。俳優のお仕事で大変なのは準備に時間がかかることです。セリフを覚えなければいけないし、人物像を掘り下げて考えなければセリフがその人物の言葉になりません。モデルは瞬発力が大事で、現場に行ってパッと変わり身の術みたいな感じでやりますが、俳優は事前の準備がないとその人物は出来上がりません。そこがいちばん大変だと思います」

 大変だからやめる。大変でも続ける。二つの考え方があるが、選んだのは後者だった。

 「それはたぶん出会いだと思います。これまでいろんな作品に出させていただきましたが、『グランメゾン★東京』の時、素晴らしい俳優さんたちに囲まれて演技することの楽しさを感じました。それと同時に、自分の俳優としての足りなさも感じました。それまでは『モデルの冨永愛』としてやらせていただいていましたが、あの時、演技をもう少し掘り下げてみたいと思い、ちゃんと俳優をやっていこうと決めました」

 モデルとしては既に世界的に活躍し、夢をかなえている。俳優としての夢は何か…。

 「大きな夢は抱いていません。いい俳優になりたい、『モデルなのに、いい演技ができる』と言われたい。演技レッスンを受けながら、今やっと一歩を踏み出した感じです。俳優は奥深いです」

 世界のファッションショーのステージで輝いているその姿は、時代劇の映像を通じて強いインパクトを視聴者に与えるだろう。

 「収録でモニターをチェックする時、いつもドキドキして、ちゃんと吉宗になれているかどうか不安を抱えながら見ています。ここまでドキドキするのはモデルを始めた頃以来かもしれません。俳優業はひよっこなので、本当に胃が痛くて、第1話の放送は胃薬を飲みながら見ると思います(笑)」

 まずは登場シーンに注目だ。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。テレビやラジオ、映画、音楽などを担当。

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