羽生九段、100局目飾れず「細かい変化を…」 拮抗状態から一転 攻め込むも誤算…掛川4戦全敗

[ 2023年1月10日 05:05 ]

第72期ALSOK杯王将戦7番勝負第1局第2日 ( 2023年1月9日    静岡県掛川市 掛川城二の丸茶室 )

指し手を進める羽生九段
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 タイトル獲得100期目を狙う羽生善治九段(52)は健闘及ばず藤井聡太王将(20)に屈した。温めていた作戦「一手損角換わり」の採用で第2日の午後までは高いレベルでの拮抗(きっこう)状態を維持。しかしリードを奪う決め手に欠き、わずかなほころびから差を広げられての投了だった。

 90手目に羽生が放った△9五角。一見厳しい王手だが、控室の久保九段は「形作りですね」と小声でつぶやいた。▲8六銀と堅実に合駒されて万事休す。頭を垂れた羽生は「細かい変化をもうちょっと掘り下げて考える必要があった」と敗局を顧みた。

 後手での採用率が4・8%しかない「一手損角換わり」を選択したのは、奇をてらったわけではないという。「まだ可能性があるのでやってみたんです」。31歳9カ月年下の王者に、じっくりと汗をかかせる。第1日から土俵中央で組み合ったまま動かない。じりじりとした進行は第2日の昼食休憩後まで続いた。

 右サイドから藤井の桂2枚が折り重なるように迫ってくる。やや押され気味を自覚したのか、64手目に「天王山」5五へと角(第2図)を放り込んだ。思えば開始早々に交換し、駒台に待機させていた大駒の初舞台。その後6六の桂と交換し、68手目△4六桂と金取りをかけたまでは計算通りだ。だが直後に▲6五桂と手抜かれ、当たった銀を逃している隙に相手王を守る右金を取り逃したのが誤算だったか。

 これで藤井戦は1勝8敗。タイトル戦で初顔合わせも白星が遠く「一手一手に深い読みの裏付けがあって指されてるということが対局してみて分かりました」と史上最年少5冠の印象を語る。それでも感想戦では敗戦後とは思えない好奇心100%の表情で敗局を精査した。この切り替えぶりは50代になっても全く変わらない。

 羽生にとって王将戦7番勝負は今回がちょうど100局目。内訳は62勝38敗と高勝率を誇るものの、掛川対局に限るとこの日で4戦全敗と、結局のところ相性が悪い。第2局の高槻は初の登場で、データうんぬんは一切フラット。「(持ち時間の)8時間は長いようで短い。時間の使い方も課題になった。気持ちを切り替えて次の対局に集中します」と、先手番の第2局をにらんでいた。 (我満 晴朗)

 《投了図以降》先手王は詰まず。代えて△8六同歩には▲4二角成△同飛▲6三桂△6一王▲7一金で、後手王が詰むため投了やむなし。

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