「鎌倉殿の13人」山本耕史「やり切った感ない」スピンオフは?小栗旬もうらやんだブレない義村役「爽快」

[ 2022年12月4日 21:00 ]

「鎌倉殿の13人」三浦義村役・山本耕史インタビュー(1)

敵か味方か。大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で“ラスボス”三浦義村役が大反響を呼ぶ山本耕史(第26話から)(C)NHK
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 俳優の小栗旬(39)が主演を務め、視聴者を魅了し続けてきたNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(日曜後8・00)も、ついに残り2回。いよいよ“最終決戦”「承久の乱」(1221年、承久3年)が目前に迫る。注目の1つは、主人公・北条義時と“ラスボス”三浦義村の“奇妙な絆”の行方。初回(1月9日)から登場し続け、小栗と共にドラマを牽引してきた義村役の俳優・山本耕史(46)を直撃。クランクアップの心境や小栗との関係性を聞いた。

 <※以下、ネタバレ有>

 稀代の喜劇作家にして群像劇の名手・三谷幸喜氏が脚本を手掛ける大河ドラマ61作目。タイトルの「鎌倉殿」とは、鎌倉幕府将軍のこと。主人公は鎌倉幕府2代執権・北条義時。鎌倉幕府初代将軍・源頼朝にすべてを学び、武士の世を盤石にした男。野心とは無縁だった若者は、いかにして武士の頂点に上り詰めたのか。物語は、江戸幕府まで続く強固な武家政権樹立を決定づけた義時と朝廷の決戦「承久の乱」へと向かう。三谷氏は2004年「新選組!」、16年「真田丸」に続く6年ぶり3作目の大河脚本。小栗は大河出演8作目にして初主演に挑んだ。

 山本演じる三浦義村(平六)は、父・三浦義澄(佐藤B作)の跡を継いだ相模の有力御家人。幕府内の苛烈なパワーゲームも、巧みな処世術により渡り歩き、生き残る冷静沈着な知恵者。北条義時(小栗)の生涯の盟友だが、隙あらば裏切ることも厭わない。

 第45回「八幡宮の階段」(11月27日)。公暁(寛一郎)を焚きつけておきながら、源実朝(柿澤勇人)と義時暗殺が失敗に終わると、容赦なく公暁の首を取り、義時への忠誠を誓った。今年6月のインタビューで、三谷氏も「ひょっとしたら、ラスボス的な意味合いで一番最後に物語に関わってくるのが、三浦義村かもしれません。彼は最後の最後に大博打を打とうと考えているかもしれません」と語ったほど。残り2回、義村はまだ何か仕掛けるのか。

 山本は「新選組!」「真田丸」「鎌倉殿の13人」と“三谷大河”皆勤賞。「新選組!」は主人公・近藤勇(香取慎吾)の無二の親友・土方歳三、「真田丸」は豊臣秀吉(小日向文世)への忠義を貫いた石田三成を演じた。土方歳三はスピンオフ「新選組!!土方歳三 最期の一日」が制作されるほどの大反響。石田三成は大谷刑部(片岡愛之助)とのコンビが視聴者に愛された。

 史実としては、義村は義時や北条政子亡き後も生き、嘉禄元年(1225年)、3代執権・北条泰時が設置した幕府の最高機関「評定衆」の一員に。貞永元年(1232年)、泰時による武家社会最初の法典「御成敗式目」の制定にも参与した。

 山本は「土方さんと義村は主人公の相棒というポジション的には共通しているんですが、自分は2番手に回って近藤のために人生を捧げた土方さんに対して、義村はどの瞬間も三浦の存続を考えていますよね。立ち位置は似たように見えて、真逆のキャラクターを演じた印象があります。大河ドラマに出演させていただいた時の気持ちよさというのは、実は物語のあるワンシーズンでガッと花を咲かせてパッと散る人物を演じることにあると思っています。石田三成公は本当に気持ちよく人生を全うしたような役。土方さんも幸運にもスピンオフを作っていただいて、自分の中で役を終えることができたんですが、今回の義村はドラマの中で天寿を全うしていないので、やり切った感があるかというと、実はないんですよね。僕の中では、まだ生き続けている役」と過去2作と比べながら、今作の約1年半の撮影を完走した胸中。

 「義村のスピンオフもあればよかった?」と水を向けると「それだと義村のスピンオフなのか、泰時のスピンオフなのか分からないですけど」と笑いつつ「今回は義時を描いた作品なので、旬くんが演じ切るのを見届けることがてきて、本当によかったなと思います」と述懐した。

 義村のキャラクター像については「北条からも比企からも和田からも頼られて、のらりくらりと、あちこちにひょいひょい行くんですが、実は生き方自体に迷いがないですよね。三浦が味方に付く方が生き残るというのは史実からも分かる通りで、やっぱり凄く人物。真っすぐ生き抜いたというのが、このドラマとしての率直な感想ですね」と分析。

 唯一のピンチは「和田合戦」直前の第40回「罠と罠」(10月23日)、巴御前(秋元才加)に起請文を飲まさた時ぐらい。「義村も計算外だったんですけど、その時点で腹は括って次の手を考えていますからね」。第2回「佐殿の腹」(1月16日)、義村は北条が源頼朝(大泉)を匿っていることを大庭景親(國村隼)に告げ、伊東との戦を回避。早々に策士ぶりを発揮し、義時に「礼を言ってもらいたいぐらいだ。どうするんだ、これから。頼朝は。首、はねちまえよ。はねて、平清盛に届ければ済むことだ。あれだったら手伝うぜ」と語った。

 「最初からブレないですよね。だから、演じていて爽快。旬くんも『いいな。義村は楽しそうで』とうらやましがっていて。正直、旬くんの義時より楽しく演じていたんじゃないですかね(笑)。旬くんは座長として本当に大変と思いながら、横でいつも通りの義村を演じるのは何か痛快でしたよね(笑)」

 小栗との共演は17年、劇団☆新感線の舞台「髑髏城の七人 Season花」が記憶に新しかったが「今回も非常にいい距離感。僕の方が年上なんですけど、小栗旬と山本耕史という関係性でも、お互いの腹の底はそんなに語り合わなくても分かるよね、みたいな。お互いの腹の底を探り合っていて、でも何か通じ合っている、まさに義時と義村の関係性に近づいたのかな。今回は優しく、夢にあふれた小栗旬もいれば、40歳を前にしてベテランの方に近づきつつある中、作品の真ん中にいる立場としての、後半の義時のような厳しさも感じられた気がします。旬くんの人間性が色々と見えた大河ドラマだったんじゃないかなと思います」

 =インタビュー(2)に続く=

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