原田美枝子 「ちむどんどん」房子役 「私の思いを乗せて伝えられる」

[ 2022年8月12日 08:30 ]

連続テレビ小説「ちむどんどん」の房子(原田美枝子)(C)NHK(PhotoBy提供写真)
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 【牧 元一の孤人焦点】NHK連続テレビ小説「ちむどんどん」でヒロイン・暢子(黒島結菜)が勤めるイタリア料理店「アッラ・フォンターナ」のオーナー・房子を演じる女優・原田美枝子(63)が取材に応じた。

 これまでの印象的な場面として原田が挙げたのが、11日、12日の放送で描かれた暢子と和彦(宮沢氷魚)の結婚披露宴。

 「三郎さん(片岡鶴太郎)との話が絡み、物語とフォンターナがうまくかみ合うシーンになったと思います。とても良かったので、プロデューサーさんに『最初から、暢子と和彦の結婚披露宴場をフォンターナにすると決めていたんですか?』と聞いたら『途中からそう考えて話を作っていった』とのことでした」

 12日の放送で暢子は披露宴の列席者の前で「沖縄料理の店を開きます」と独立への思いを語ったが、これまでファンターナは物語の重要な舞台になってきた。

 「私はフォンターナのセットが大好きなんです。細部が一つ一つきちんと作られていて、アンティークも置かれ、しゃれていて、どこを切り取っても絵になります。そこで私たちが何カ月か撮影することによって、最後の頃はフォンターナという店がまるで実在するかのように生き生きとしているように感じました。フォンターナでの撮影は全て終わっているんですが、あのセットから去ることが寂しかったです」

 房子は戦前からのたたき上げの料理人。料理、食文化などに関する圧倒的な知識と人間力で店に君臨し、プロの料理人を志す暢子と相対してきた。

 「格好良くありたいと思いました。房子は屋台から始めて、少しずつ努力してフォンターナを開店した女性です。今は女性が働くのが当たり前の時代ですが、当時は女性が結婚せずに仕事を続けていくことへの風当たりも強かったでしょうし、あんなに大きな店を銀座に出すこと自体が凄いことだと思います。役作りとしては、演出側の提案で着物を着たことに助けられました。イタリアで修業した房子が日本の文化の大切さに気づき、帰国後に着物を着たという設定です。房子の着物姿は旅館のおかみのような感じではなく、羽織を着ることで男性がジャケットを着ているような感じで、それがとても良い効果を出してくれました。私と房子に似ているところがあるとすれば、私もどちらかと言えば性格的に男っぽくて、あまりぐちぐち言わないところかもしれません」

 過去の放送では、従業員不足の危機から房子自身が調理場に立ち、料理を作る場面もあった。

 「私も普段、料理をしますが、プロが使う重いフライパンを動かすのが難しかったです。包丁も自分が使っているものより1・5倍くらい長かったので、それで切るのも大変でした。でも、料理監修の方々が親切に教えてくれたおかげで、後で映像を見たら上手な料理人のように映っていたので、うれしかったです」

 房子と暢子は師弟のような関係。共演する黒島との関係性にも役柄を反映する部分があるようだ。

 「あるシーンで黒島さんに『こうした方がいいのでは?』と言ったことがありました。黒島さんはすぐに取り入れてくれて、次の芝居がとても良かったんです。房子と暢子の関係にリンクしたようになってうれしかったし、同じ俳優として感じたことを黒島さんに伝えることができて私自身も良い経験になりました。黒島さんは真っすぐに物事に向かっていく感じの役者さんです。たぶん、シャイな人だと思いますが、内に秘めているものの強さを感じます。結婚披露宴のシーンで、ドレスもかわいかったですが、やはり、琉装で出てきた時のたたずまいがとてもかわいくて、さすが沖縄の子だと思いました。まだ25歳で、今後がとても楽しみです。これからどのように生きていくのか、どんな仕事をしていくのか。暢子に対する房子のような気持ちで見守っていきます」

 自身は1975年の「水色の時」以来、47年ぶりの朝ドラ出演だが、今回はヒロインの人生を左右する重要な役柄だけに格別の思いがあるようだ。

 「47年前は少ししか出ていないので、あまり記憶がないんです。今回の房子は、自分の人生を垣間見せられるような役です。大変なこと、うれしいこと、いろんなことを経験して、若い人に伝えられることがある。房子は随所に良いセリフがあって、それに私の思いを乗せて伝えることができて、とてもうれしいです」

 今後も物語の中で重要な役割を担っていくことになりそうだ。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。テレビやラジオ、映画、音楽などを担当。

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