NHK「『ニッポンで頑張る!』を応援します」 取材を超えたドキュメンタリーのぬくもり

[ 2021年9月22日 08:00 ]

NHK「『ニッポンで頑張る!』を応援します 泣き笑い交友記」のウタエフ・ラジズ氏(C)NHK
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 【牧 元一の孤人焦点】たぐいまれなドキュメンタリーが生まれた。NHK「『ニッポンで頑張る!』を応援します 泣き笑い交友記」(23日後6・05)だ。

 ドキュメンタリーは通常、取材者が対象の動きを追う。ところが、この番組は対象に寄り添い、時に深く介入する。対象との親密な関係と、その発展によって生まれたドキュメンタリー。分野は異なるが、ノンフィクション作家の沢木耕太郎氏がプロボクサーの活動に深く関わった著作「一瞬の夏」を思い出した。

 この番組の取材対象は、3年前にウズベキスタン共和国から来日した留学生のウタエフ・ラジズ氏。フードデリバリーのアルバイトをしながらホテルの専門学校に通い、日本のホテルに就職することを目指している。

 取材者の1人が、ディレクターの小関竜平氏。2年前、サプライズ番組の主人公として、当時コンビニでバイトをしていたラジズ氏を選び、昨年2月にラジズ氏の両親をウズベキスタンから日本に招く計画を進めていた。

 ところが、コロナ禍で両親の来日が不可能となり、番組は頓挫。普通ならばここでラジズ氏と小関氏の関係も終わるところだが、小関氏はその後も、コロナ禍で収入減に苦しむラジズ氏にバイトを紹介するなど、交流を続けていた。

 制作統括の鳥本秀昭氏(NHKエンタープライズ)は「サプライズ番組が頓挫して半年くらいたって小関君から『あの時のラジズ君と交流を続けている』という話を聞いた。それは番組のためではなく、ラジズ君に対する純粋な思い、小関君の優しいパーソナリティーから生じたことだった。取材する側と取材される側を超えた関係。そのこと自体が良い話で、裏事情も含めて番組にしたいと考えた」と話す。

 番組を見ると、ラジズ氏の人柄の良さ、懸命さがうかがえる。小関氏がラジズ氏を応援したくなる気持ちも良く分かる。ぬくもりを感じる。日本は良い国なのかもしれないとも思える。

 ラジズ氏が日本に来たのは、来日経験のある親戚から「日本は優しさと思いやりのある国」という話を聞いたのが発端。ラジズ氏は「日本は世界で1、2のサービスの国。日本で経験を積んで、故郷にホテルを作り、日本のようなサービスをやりたい」と考えている。日本には世界に誇るべき部分があるようだ。

 鳥本氏は「いつの間にかコンビニの店員が外国人になり、流ちょうな日本語を話し、おもてなしをするようになっている。そんな状況を面白いと思ったのが、番組の始まりだった。これから日本は共生社会になっていかないといけない。外国人を隣人として、仲間として暮らしていくことになる。この番組をご覧いただいて『私も外国人の友だちを作ろう』と思っていただければ」と話す。

 これは幸運に恵まれたドキュメンタリーとも言える。ラジズ氏、小関氏のような人物、関係性がこの日本に多く存在するわけではないからだ。今後、同じような番組を作ろうとしてもなかなか難しいだろう。ただ、目標に向かって日本で歩むラジズ氏のその後は気になる。続編を期待する。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴30年以上。現在は主にテレビやラジオを担当。

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