王将戦第6局 14年ぶり千日手 渡辺王将、残り時間懸念 永瀬王座、先手放棄し路線変更

[ 2021年3月14日 05:30 ]

スポニチ主催 第70期王将戦7番勝負第6局第1日 ( 2021年3月13日    島根県大田市・さんべ荘 )

<王将戦第6局第1日>永瀬王座の初手で第6局が始まる(撮影・中村 達也)
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 渡辺明王将(36)=名人、棋王との3冠=に永瀬拓矢王座(28)が挑む第6局が13日、開幕した。戦型は第1、5局に続く今期3度目の角換わりとなったが午後2時11分、千日手に。王将戦7番勝負では14年ぶりに先後を入れ替えて1時間後、指し直した。指し直し局の戦型も角換わりになり、42手目を永瀬が封じた。第2日も同所で14日午前9時、指し継がれる。

 スーツを羽織って、永瀬が身なりを整えた。昼食休憩明けから40分余り。渡辺の72手目△8四飛に同一局面が4度現れ、今期初の千日手が決まった。

 戦型は角換わり。40手目△9四歩の局面が2日前、永瀬が近藤誠也七段(24)に勝った名人戦B級1組順位戦とほぼ同じになった。違いは先手永瀬の端歩の位置のみ。9勝3敗で初のA級昇級を決めた局面へ、違う手順で到達した。

 解説の北浜健介八段(45)は「お互いに自信があった証拠」と分析する。永瀬の勝ち将棋だったが、負けた側を持った渡辺にも「打開策あり」のサインとの見立てだった。

 ところが午後、永瀬が有利な先手を千日手で放棄する。「(永瀬が)読み進めると、思わしくない変化が多かったのでしょう」とその路線変更を指摘した。

 その永瀬は封じ手後「互角なので」と語り、少なくとも自身に利がないことからやむなしとの判断を示した。永瀬の千日手は通算552局目で実に41局目、7・4%の高率だった。心理的抵抗は少なかった。

 一方の渡辺は、2日制タイトル戦では自身初の1日目での千日手という。2日目のポイントを「残り時間の感覚」とし、両者で計6時間しか1日目に消費しなかった点を懸念材料に挙げた。

 王将戦7番勝負の千日手は、羽生善治王将が佐藤康光棋聖の挑戦を受けた第56期第6局以来14年ぶり。その第56期は第1局も千日手となり2度千日手が現れた。このときは実質9局目の第7局を羽生が制し、通算10期の獲得で2人目の永世王将に輝いている。

 指し直し局も角換わりで、第5局と同じ進行になった。封じ手の局面は渡辺が2歩得、永瀬は馬をつくった。「主張が違う分、そこでちゃんと指せるかどうか」。永瀬は盤面中央の馬の活用を期していた。渡辺が勝てば3連覇、永瀬が勝てば棋界3度目の3連敗4連勝へ王手がかかる。(筒崎 嘉一)

 ▽千日手 駒の配置、両対局者の持ち駒の種類や数、同じような手順が繰り返されて局面が進展せず、全く同じ状態が1局中に4回出現すると千日手になる。その勝負をなかったことにして引き分けとし、先手と後手を入れ替えて最初からやり直す。

 【王将戦規定=千日手の4のイ】1日目の午後3時までに千日手になった時は、1時間後に同じ場所で指し直すこととする。ただし、昼食時間は除く。

 《封じ手は?》
 ▼立会人福崎文吾九段 △1五同歩。次に7六に打ちたい歩が手駒に欲しいところ。
 ▼副立会人北浜健介八段 △2三歩。飛車の引く場所を打診するならここでは。
 ▼記録係高田明浩三段 △5五銀左。次に4四歩で桂を狙いたいところだから。 

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