「いだてん」演出陣が語る綾瀬はるかの凄さ「ヒロイン力と決定力」反響の冷水浴シーン秘話「本番一発勝負」

[ 2019年5月5日 08:00 ]

大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」で主人公・金栗四三(中村勘九郎)を支える妻・スヤを演じる綾瀬はるか(C)NHK
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 女優の綾瀬はるか(34)がNHK大河ドラマ「いだてん~東京オリムピック噺(ばなし)~」(日曜後8・00)にレギュラー出演。主人公・金栗四三を支える妻・スヤの明るさを体現し、癒やしの存在となっている。夫婦愛を描くホームドラマとなっている第2章前半のキーパーソン・綾瀬の凄さや魅力を演出陣に聞いた。綾瀬が持つ「ヒロイン力と決定力」「少女、女、母親の長いレンジの役の成長を、どれも説得力を持って演じられる凄さ」がドラマを引っ張る。

 歌舞伎俳優の中村勘九郎(37)が前半の主演を務める大河ドラマ58作目。2013年前期の連続テレビ小説「あまちゃん」で社会現象を巻き起こした脚本家の宮藤官九郎氏(48)が大河脚本に初挑戦し、オリジナル作品を手掛ける。20年の東京五輪を控え、テーマは「“東京”と“オリンピック”」。日本が五輪に初参加した1912年のストックホルム大会から64年の東京五輪まで、日本の激動の半世紀を描く。

 第14回「新世界」(4月14日)から第2章がスタート。スヤ(綾瀬)は、もともと四三(勘九郎)とは幼なじみ。熊本・玉名の医者(佐戸井けん太)の娘で、村一番のハイカラなお嬢様。四三に淡い思いを抱き、四三の五輪出場を応援してきた。熊本の名家・池部家の跡取り・重行(高橋洋)と結婚したが、胃弱の重行が死去。義母・池部幾江(大竹しのぶ)が四三を養子に迎え入れ、スヤは四三と再婚した。

 第17回「いつも2人で」(5月5日)は第1次世界大戦のため、1916年のベルリン五輪が中止に。教員になる道を捨て、棄権に終わったストックホルム五輪の雪辱に燃えていた四三は激しく落ち込む。熊本から上京したスヤは夫の無念を受け止め、夫婦として共に痛みを分かち合う。スヤの愛を力に、四三は再び走り始める…という展開。

 第15回「あゝ結婚」(4月21日)と第17回の演出を担当した一木正恵氏は、スヤのキャラクター造形について「もちろんスヤさんの人生や人となりについて確認しましたが、最も濃密だったのは、熊本県玉名郡の、実際に四三さんとスヤさんが暮らした家で、存命の娘さんたちやお孫さんとともに、スヤさんについて語り合うことができたこと。この時間を持てたことが大きいです。写真を見たり、思い出話を聞いたり。面影を受け継ぐ娘さんたちの明るさや笑顔、立ち居振る舞いから、スヤさんという人間造形が綾瀬さんの中で浮かび上がってきたと思います。6人の子供たちにどのように接していたか。義理の母・幾江さんとの関係はどのようであったか。幾江さんが顔を洗う際にはスヤさんが縁側で水の張ったたらいを持って待っていたこと、毎朝太陽に家族の無事を祈っていたことは、実際に脚本化されていますが、すべてこの時にうかがったエピソード。役者さんがこのような時間を惜しむことなく大切に考えてくれることは、演出としてもうれしく、ありがたく感じます」と明かした。

 綾瀬の魅力については「ヒロイン力と決定力を兼ね備えていること」と表現。例えば、第12回「太陽がいっぱい」(3月24日)(演出・一木氏)。スヤが「どうしても四三さんに食べてほしかです。精ばつけてほしかです」と鯛を持って金栗家を訪ねるが、スウェーデンのストックホルムまで送るのに「2週間かかりますけん、腐りますけん。マラソンは今日ですけん」と兄・実次(中村獅童)に無理だと言われるシーン。一木氏は「ここを微笑ましく成立させられるのは、日本広しといえども綾瀬さんしかいません。それは、もちろん彼女のパブリックイメージもありますが、本当の澄んだ心根、心地よい声、そして、しっかりとした演技の計算がなければ成立しない技。このヒロイン力に感服します」と称賛。

 さらに第15回は「大竹さんと並んで決して引けを取らない心情表現と決定力」。義母・幾江から「(四三を)好いとっとね?」と問われるシーンは「なかなか見ることのできない、ハードな場面。ここで彼女は夫への愛情にウソはなかったこと、しかし、もう一度生きるなら四三を選ぶという意志を毅然と伝えてみせました。スヤという人格は損なわれるどころか、正直さ、たくましさ、生命力によって、さらに輝きました。綾瀬さんは脚本や現場を疑わず、思いっ切りやる人。その素直さ、真っすぐさ、美しさ、潔さ。綾瀬さんの魅力は、ここにすべてがあると思っています」と褒めちぎった。

 第15回のラストは、スヤの冷水浴も反響を呼んだ。結婚した四三から手紙で冷水浴を勧められたスヤが「何事も経験ばい」と頭から水をかぶり「ひゃー!」と叫ぶシーン。四三の日課だが、四三の日記と手紙の中に「スヤも冷水浴をやりなさい」と書かれていた史実を取り上げた。

 「これは個人的な思いですが、四三さんとスヤさんは結婚してから5年間、子供を授かっていません。一方、生涯6人のお子さんを授かっています。このことから、四三さんがオリンピックに邁進していた頃は、本気でプラトニックだったのではないかと考えています。そんな遠距離夫婦は手紙のやり取りによって気持ちを確かめ、愛情を育てていったのでしょう。少なくとも『いだてん』の中では、そんなイメージを役者さんと共有していました。冷水浴は、綾瀬さんにとって、ちょっとエポックメイキングなシーンになるだろうとは予想していたので、この上なく美しく、かつキュートに撮りたいとスタッフ一同、緊張して挑みました。撮影は水を使わずにテストを何度も行い、本番は一発勝負で決めました」と振り返り、秘話を打ち明けた。

 一木氏にとっては、綾瀬が主演を務めた2013年の大河ドラマ「八重の桜」以来のタッグ。「6年ぶりに一緒に仕事ができて、本当にうれしいです」と喜びながら「当時は幕末のジャンヌダルクとして、鉄砲を持って新政府軍と撃ち合った戦士としての鍛え方と運動神経に惚れ込みました。全力で舞台空間の中に入り込み、迷いなく肉体と精神をそこに放り投げるように演技する。そこから生まれる力強い表現は変わらないどころか、さらにパワーアップしたと思います。(第3回の)列車を追う驚愕の自転車爆走シーンなどが、その例です」と進化を証言。

 「一方、今回、実にいいなと思うのはラブストーリーの側面。人を好きだと思う気持ち、その気持ちがはぐらかされた時の繊細な表情や目線。第15回の初夜、2人が『(五輪のこと)(お義母さんのこと)お互い頑張りましょう』と語り合う場面の表情は、本当に凄かったです。多くの人が彼女に期待する『癒やし』『メジャー感』にきちんと応え、なおかつ『わたしを離さないで』(16年、TBS)などに見られる難解な人間ドラマにも挑戦し、表現力を磨いた成果であろうと思います」と続け「30代を迎え、人としても充実しているのだろうと思います。飲み会にも付き合ってくれる回数が増えました」と笑った。

 「いだてん」の演出は、外部演出家として大河初起用された「モテキ」などの大根仁監督を含め、チーフの井上剛氏、ストックホルムロケを主に担当した西村武五郎氏、一木氏の4人体制。

 綾瀬について、初タッグの井上氏も「以前のイメージは天真爛漫でしたが、ご一緒してみて、その印象は変わらないです。時折ブラックなコメントも豪快にされますが、そこもまた天真爛漫!身体能力の高さも凄く、天然ぽい役柄から大人の色香や落ち着きまで、振り幅も広く、いつも凄いと思っています」と舌を巻く。

 第3回を担当した西村氏は「最後、自転車で列車と並走して四三さんを見送るのですが、とにかく綾瀬さんの身体能力はハンパない。綿密に速度を打ち合わせ、コントロール、実験して行いましたが、奇跡の並走とお芝居を撮ることができました。この時も、四三さんの前では溌剌と元気よく送り出し、列車が消えた後に少し憂いが生まれるということを話し合い、見事に表現してくれたと思います」と回想。

 「凄さで言うと、少女、女、母親の長いレンジの役の成長を、どれも説得力を持って演じられるということでしょうか。第1章はまだ10代ですが、見事に溌剌と。第2章は結婚から母親。第21回の演出を担当しましたが、アントワープ五輪から帰ってこない四三が、ようやく帰国してスヤさんと再会するシーンが印象的でした。とにかく四三の不在に耐え続け、応援し続けたスヤさんも、さすがに堪忍袋の尾が切れるのですが、四三と再会するシーンは短い間で母親として、女としての感情の変化を実にうまく表現してくれたと思います」と予告した。

 演出陣が口を揃えて絶賛してやまない綾瀬の演技に目を凝らしたい。

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