【内田雅也の追球】「攻める」守備が青柳を救い「攻める」作戦が今永攻略につながった

[ 2023年5月13日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神6―3DeNA ( 2023年5月12日    甲子園 )

<神・D>2回、林の左前打を処理し、三塁を狙った一走・戸柱を刺すノイジー(撮影・北條 貴史)
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 苦しそうにしていた阪神先発・青柳晃洋を救ったのは左翼手シェルドン・ノイジーの好守備・好送球だった。

 1回表は先頭にストレートの四球を与えるなど2安打で先取点を奪われていた。2回表も先頭・戸柱恭孝に安打。無死一塁から林琢真に三塁線をゴロで破られた。フェンス前で処理したノイジーは三塁へダイレクト送球、一塁走者・戸柱を刺したのだ。間一髪で無死二、三塁となるところを1死二塁でとどめ、この回無失点でしのいだ。

 「(二塁を)回れ、と思って見てました」と外野守備走塁コーチ・筒井壮は言う。「まず打球への寄り付きが早かった。(左打者の)林を追い込んだのでライン側に寄せていましたしね。あのコース、シェルドンなら刺せる。もう慣れてます」

 内野手出身の新外国人に、キャンプから外野守備を指導してきた筒井は既に信頼していた。遊撃手が三遊間ゴロをさばくように向かい、走者への殺意がこもった送球は、攻撃的な守備だった。

 反対に相手は左翼手に拙守があり好対照を描いた。2回裏、青柳2点二塁打で逆転後、近本光司の飛球を見失い、ポトリと落ちる適時二塁打となった。たそがれ時の幸運に近本は「後の守備に向け準備します」とコメントした。直後の3回表、左中間寄りライナー性飛球を好捕したのだった。

 「わが身にも起こりうる」と筒井は気を引き締めた。「薄暮で仕方ない、ではいけない。対策はしています」。内容は機密だが「打球から目を切らない」「ジェスチャーで周囲に伝える」などを徹底する。ともかく相次ぐ好守で青柳をもり立て、エースは開幕戦以来の白星を手にした。

 今永昇太をKOした攻撃面では1回裏、近本二盗の効果をみたい。1点を先取された直後、左前打で出塁し2球目に走った。今季、初回の盗塁企図は初めて。監督・岡田彰布は「これまでも盗塁を出していたが」と近本は自重していた。筒井は「本当は初球に走ってほしかった」と何か盗める自信があったのだ。

 得点にはつながらなかったが、あの二盗で「攻める」姿勢が広まった。

 闘将と呼ばれた西本幸雄は「選手は監督の作戦で心を読み取る。堅くいけば選手が硬くなる。積極的に動けば選手も動く」と語っていた。2回までに空振り10個と多かったのは積極性の裏返しだろう。難敵攻略につながった。=敬称略=(編集委員)

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