こどもの日によせて…【内田雅也の追球】あきらめず、みんなで 「一度あきらめたら、それがくせになるぞ」

[ 2023年5月5日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神3ー2中日 ( 2023年5月4日    甲子園 )

<神・中>8回2死一、二塁、佐藤輝の右前打で勝ち越しの生還を果たす島田。捕手木下(撮影・北條 貴史)
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 逆転勝ちしたタイガースには、あきらめない心がありました。

 1点を追う8回裏1アウト一塁、中野選手はピッチャーゴロにたおれました。ふつうなら二塁―一塁とわたるダブルプレーでチェンジです。

 ところがピッチャーからの送球を受けたショートが二塁を踏み、一塁に投げる前にボールをこぼしたのです。中野選手は一塁に生き残り、2アウトからクリーンアップトリオの3本連続ヒットで2点をとったのです。

 ショートはあせったのでしょう。打った中野選手がけんめいに一塁に走る姿が目に入ったからです。岡田監督は「中野の足だとふつうに投げていても一塁はセーフだったんじゃないか」と話しました。足の速い中野選手がいつも全力疾走(しっそう)していることをわかっていたからです。

 ピッチャーゴロで「ダメだ」とあきらめていては起こらない相手のミス、そして逆転でした。

 アメリカの少年野球をあつかった映画に『がんばれ!ベアーズ』があります。弱かったベアーズが少しずつ強くなっていきます。コーチは選手たちに「あきらめるな!」とはげまします。「一度あきらめたら、それがくせになるぞ」。おぼえておきたいことばです。

 決勝点をうばったのは島田選手のベースランニングでした。同点とした後の8回裏2アウト一、二塁。二塁のピンチランナーとして出て、佐藤輝選手のライト前ヒットでホームへかえりました。外野はずいぶんと前に守っていましたが、送球より早かったのです。

 佐藤選手が打ってからホームにすべりこむまでをストップウオッチではかると6秒46!そうとうな速さでした。
 なぜでしょう。一塁コーチボックスにいた筒井コーチによると「リードを2メートル、大きくとっていましたから」。相手のセカンド、ショートがノーマークだったので筒井コーチの合図でリードを広げたのです。「かれはすぐに反応できる」と、ふだんから、よりよい走塁ができるように練習をしているからこそ試合でできたわけです。

 島田選手はひかえ選手です。ベンチにいましたが、岡田監督が島田選手を見て、右手で「行け」と指示すると、すぐに飛びだしていきました。試合に出る心がまえや準備ができていたのです。
 そのとき出ている9人だけでなく、ベンチもふくめた全員でたたかえたとき勝つことができるのです。(編集委員)

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2023年5月5日のニュース