球児引退セレモニー 10年越しの投球…阪神・矢野監督に球児が現役最後の1球

[ 2020年11月10日 22:13 ]

セ・リーグ   阪神0-4巨人 ( 2020年11月10日    甲子園 )

<神・巨>矢野監督(右)を相手に最後の投球を行う藤川(撮影・椎名 航)
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 阪神・藤川球児投手(40)の引退セレモニーが10日、甲子園球場で行われ、矢野監督(51)がサプライズの演出に一役買った。

 試合後の引退セレモニーでは「ラストピッチング」として藤川との最強バッテリーを再結成。リーグ優勝へとけん引した正捕手が構えるミットに“現役最後の火の玉ストレート”を投げ込んだ。最後は監督の立場を超えて戦友として抱き合った。試合では最後の登板に監督就任後初めてマウンドで出迎えた。矢野監督は「最後になってしまうんだなというね気持ちでいろいろな思いがありながら送り出しました」と感慨深げだった。

 矢野監督と藤川には、忘れられない「引退試合」の因縁がある。10年前の2010年9月30日の横浜戦は、矢野捕手の引退試合だった。しかし、2点リードの9回に、藤川が逆転3ランを被弾し、2死から登場予定だった矢野のプレー機会は消滅。引退試合ながらも出場しないで終わるという想定外の展開となった。

 試合後に号泣した藤川に、矢野は「今までどれだけ球児に助けてもらい、ええ思いをさせてもらったか。球児を責めることなんてできないし、そんな思いは一つもないよ」と談話を残した。本心だった。ところが、矢野が帰宅後、藤川が矢野の自宅を訪ね、「今日は本当にすみませんでした」と頭を下げてきたという。

 藤川は涙ながらに思いの丈を語り始めた。「うまく送り出せることができなくて、すみません。僕にとって、いやタイガースの選手にとって、シーズンの勝敗と同じぐらい今日は大事な試合でした…。思い切り、矢野さんの引退試合を意識してました。それがアカンという人もいるかもしれんけど、僕は全く後悔してません。矢野さんが残してきてくれたものは、そんなもんじゃない。ふがいないです…」。矢野はその本心を聞き、かえって、自らのことを思ってくれていた言葉がうれしく、キャッチャー冥利に尽きると感じたことがあった。

 今となっては、良き思い出。しかし、10年越しに球児の球をつかんだ矢野監督にとっても、今回は思い出に残る「引退試合」となったに違いない。

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