「思い切っていけ!」「バックを信じろ!」 広島・田中広が選手会長1年目で示した「リーダーの言葉力」

[ 2020年11月10日 09:00 ]

広島・田中広(撮影・奥 調)
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 リーダーにふさわしい言葉の重みがある。新選手会長として迎えた今季、広島・田中広輔内野手(31)が見せたのは、若手投手に寄り添い、的確に助言する姿だった。

 今季初めて先発ローテーションを回った遠藤は、初回から腕を振れずに、先制点を許す試合が続いていた。10月21日の阪神戦。初回に1与四球2安打で2失点した直後、ベンチで田中広から声をかけられた。「自分のタイミングで投げろ。思い切っていけ」。この一言で生まれ変わった。「気が楽になった」と同戦から3戦連続で2与四球以内と課題の制球力は改善され、4日の巨人戦では1失点完投として今季最終登板を終えた。

 救援として台頭したケムナにも忘れられないアドバイスがある。「バックを信じて打たせてこい」。シーズン序盤、細かい制球を求めるあまり、球威で押し込む本来の姿を見失っている所を指摘された。「これまでは自分のことで精いっぱいだったけど、広輔さんに言われて意識が変わった」。プロ2年間で1試合登板だった右腕は、「8回の男」を務めるまでに成長した。

 5位に沈む今季。沖縄2次キャンプ最終日に田中広が務めた手締めのあいさつを思い出す。

 「シーズンに入れば、うまくいかないことの方が多いでしょう。そのときにチームのために行動できる自己犠牲がチームの一体感につながると思います。一体となって頑張っていきましょう」

 田中広自身も、打率1割台目前まで低迷した時期があった。自身の状態に関係なく、誰よりもマウンドに足を運んで投手を励ました。指揮官が掲げた投打の助け合い。1年間通して、選手会長がその見本だった。(記者コラム・河合 洋介)

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2020年11月10日のニュース