【内田雅也の追球】「腹を立てないために」――判定の癖を把握した阪神・ボーア

[ 2020年6月7日 08:00 ]

練習試合   阪神6―2ソフトバンク ( 2020年6月6日    甲子園 )

<練習試合、神・ソ>2回、空振り三振に倒れ、球審に声をかけるボーア(撮影・坂田 高浩)
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 阪神の新外国人ジャスティン・ボーアは「頭のいい選手」という。打撃コーチ・井上一樹がよく話していた。

 コロナ禍で練習試合が中断される前、3月6日のオープン戦後、井上は「早く1本ほしいね」と言った。長打の出ない新4番に、ひとまずの結果を求めた。「ザワザワするでしょ。本人も僕ら首脳陣もマスコミや周囲の皆さんもね」コーチでも焦りを感じているのか、少し心配になった。

 ただし、井上は「それでも彼は頭のいい選手なんでね」と話していた。「日本の配球傾向やストライクゾーンの違い、球審による傾向も頭に入れようと勉強している。これが強みだね」

 今月2日に再開された練習試合でその1本が出た。実戦18試合、45打席目の初本塁打を放つと、3試合連発。3カ月前の不安は消えうせ、逆に「頭のよさ」を思う。

 6日のソフトバンク戦(甲子園)もそんなボーアの頭脳が垣間見えた。3打席無安打で退いたが、目をひいたのは2三振を喫した直後である。

 2回裏2死二、三塁では2ボール―2ストライクから東浜巨の外角低めシンカー――「亜大ツーシーム」か――に空振り三振を喫した。直後、球審(真鍋勝己)に何ごとか尋ね、うなずいていた。「ボール球か?」に納得していたのだろう。

 4回裏2死一塁では古谷優人の外角低め直球を見逃し三振。球審に目をやり、またうなずいた。真鍋のストライクゾーンの確認していたのだ。

 審判員ごとのゾーンを知るのは重要だ。なぜなら「なぜ今のがストライクなのかと、ハラを立てなければならない」と、かつて「不惑の大砲」と呼ばれた門田博光(南海―オリックス―ダイエー)が語っている。山際淳司の『ベースボール・スケッチブック』(講談社文庫)にあった。35歳で本塁打王となった1983年当時の話である。88年には「不惑」40歳で再び本塁打王となっている。

 だから門田は「アンパイアがどういう球をどう判定するか、頭に入っている」と語った。<ピッチャーのクセ、球筋、その日の自分のバッティング、さらにアンパイアのクセもメモしつづけた>とある。山際は<門田のいう「クロートの世界」とは、つまりそういうことなのだ>と書いた。

 8回表に登板したジョン・エドワーズは判定に少し不満そうな表情を見せ、制球が乱れた。腹を立てたのかもしれない。

 そんな無用な心の乱れをなくす作業も開幕準備である。ボーアはまた一歩、前に進んだわけである。=敬称略=(編集委員)

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