23年開業 日本ハム、夢の新球場 日本初開閉式の天然芝球場 既成概念を覆す構成とは――

[ 2020年5月29日 05:30 ]

エスコンフィールド北海道の完成予想図の前に立つ日本ハム・前沢賢取締役事業統括本部長
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 23年の開業を目指し、今月1日に北海道北広島市で着工した日本ハムの新球場「エスコンフィールド北海道」の計画の新たな一端が判明した。形状は左右非対称で右中間がやや狭くなり、外野両翼にブルペンを設置。野球観戦以外にも楽しむエリアを充実させる。「つくろう。世界がまだ見ぬエスコンフィールドを。」「つくろう。これまでにないスポーツ観戦の形を。」をコンセプトに、既成概念を覆す構想に迫った。(東尾 洋樹)

 日本初となる開閉式の天然芝球場は、細部までこだわりの詰まったボールパーク。新球場プロジェクトの中心を担う、球団取締役事業統括本部長の前沢賢氏(46)は、球場の規格決定に至った経緯を明かした。

 「“左右対称にする必要はないでしょう”というところからスタートした。本塁打を出やすくする意図はなかったが、無理やり大きくもしたくなかった」

 両翼100メートルながら札幌ドームと比較するとややコンパクト。特徴は左中間がやや広く、右中間がやや狭くなっている形状だ。戦い方も変わるが、吉村浩GM(55)に提案すると「球場に合わせたチーム戦略をつくればいい」と背中を押されたという。新球場の顔として期待される左の大砲・清宮にとっては有利となる。

 現在の12球団本拠地球場で唯一となるのが、両翼のフェンスと外野席の間に設置されたブルペンだ。前沢氏は、同様のスタイルが多い大リーグの球場と比較しても「あんなに近くで投手が投げているのを見られることはない」と説明した。

 札幌ドームはサッカーとの併用スタジアムのため、ファウルエリアは他球場の約2倍あった。本塁からバックネット裏まで約25メートルの札幌ドームに対し、新球場は約15メートル。フェア地域も含めたフィールドエリアの面積は札幌ドームよりも約15%、縮小された。「東京ドームのファウルグラウンドが狭いと言われているけど、それよりもびっくりするほど近い。グラウンドを大きくするなら、チームエリアやコンコースを広げたかった」とファンの臨場感、選手の使いやすさを重視。ロッカールームは日本最大級へと拡大した。

 バックネット裏の最前列席はグラウンドレベルとほぼ同じ目線となる。栗山監督は「(フィールドが)近いと選手の微妙な心の動きが読み取れたり、野球の醍醐味(だいごみ)を感じられる可能性が高い」と話した。

 新たな観戦スタイルとして、前沢氏が温めている斬新な構想がある。その一つが、座席料とは切り離した入場料の無料制度だ。

 「大人を無料にできるかは微妙ですが、少なくとも子供たちには自由に見てもらえる環境をつくりたい。野球のルールを教えるのは難しいけど、野球を見てもらうことが一番の普及」。球場に隣接したマンション建設も模索し、居住者には無料入場できる権利の付帯も検討中だ。左翼側に隣接するホテル最上階からは野球観戦が可能。ホテルと温浴施設を擁する球場は、世界初となる。球場を中心とした街づくりが、その先にある。

 一つの参考となったのが、大リーグのブレーブスの本拠・トゥルーイスト・パークだ。同球場周辺は商業施設や住宅が立ち並ぶ複合施設として整備されている。全て日本ハムの球団理念「スポーツと社会が近くにある社会=スポーツコミュニティー」につながる。

 新球場の中堅後方は川が流れる「沢エリア」で、自然とも共生。右翼から中堅後方はキッズエリアとする。子供用野球場、キャンプ場に加えてジップラインも設置予定だ。大人向けに飲酒しながら観戦できるエリア、野球を本格的に見る人のエリアとコンセプトごとに分ける発想は、カージナルスの本拠・ブッシュ・スタジアムからヒントを得た。

 球場の周辺開発は23年から4年ごとに「フェーズ5」まで20年計画で行う。現時点では「フェーズ1」の約70%が仕上がったのみ。23年の開場時でさえ、「未完成」。夢の球場の完成形が待ち遠しい。

 《栗山監督「ディズニーランドに行く感覚で」》栗山監督は、夢の詰まった新球場を「ある意味、ディズニーランドに行く感覚で野球場に行けるかどうか」と例えた。

 その「原体験」が、スポーツキャスター時代に訪れた米フロリダ州オーランドのブレーブスの旧キャンプ地。ディズニーワールドに隣接していた。グラウンドと同じ高さにあるバックネット裏の席から、後に野球殿堂入りする右腕グレグ・マダックスの投球を間近で見た。「ディズニーランドの近くにある空気感で球場もおとぎの国っぽい。あの距離感でマダックスの球を見られたのは本当に面白かった」と目を輝かせた。

 球場の活用法として書道大会などスポーツ以外のイベントの表彰式を行うという私案も披露。23年の開場に向けたチームづくりについては「新しい時代を築いていく人たちが、いい形でそこにつながっていくように成長を促しておかないといけない。あとは開場した時に北海道の人が“おらが球場はこんなに凄いんだぜ”ってうれしそうな顔をしているのをどこかで見ていたい」と思いをはせた。

 《北広島駅からアクセス課題》○…新球場は、最寄りの北広島駅から徒歩約20分とアクセス面が課題。球場前に建設予定の新駅は、JR北海道が約7年を要する整備案を発表している。21年から着工しても最短で27年。開場時はシャトルバスなどを運行。札幌ドームで約4万1000席に対して700台の駐車場は、約3万5000席に対して4000台と増やした。

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