野球が人々を結び付ける――「フィールド・オブ・ドリームス」の舞台で試合を行う意義

[ 2019年8月25日 10:30 ]

「フィールド・オブ・ドリームス」の映画が撮影された野球場
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 昨年の今ごろ。映画「フィールド・オブ・ドリームス」の舞台となったアイオワ州ダイアーズビルに足を運んだ。現在は観光地となっており、名称はそのまま「フィールド・オブ・ドリームス・ムービーサイト」。野球場も、主人公の家も、その家族が座った木製の観客席も残されている。周辺はどこまでも広大なトウモロコシ畑。古き良き米国の原風景を、しばし体感できたひとときだった。

 大リーグ機構は今月8日、来年8月13日にこの地の周辺に仮設の球場を建設し、ホワイトソックス―ヤンキースの公式戦を行うと発表した。さすがに、同じ球場は使えない。撮影場所の球場はサイズ、グラウンドの質など良くも悪くも草野球仕様。例の観客席は、どう頑張っても20人程度しか座れない。しかも、グラウンドはトウモロコシ畑に囲まれているだけに、大リーグ公式サイトは「あまりにも多くのボールがなくなってしまう」とユーモラスに伝えた。

 メジャーでは日本のプロ野球のような地方開催がほとんどない一方、米国外で公式戦を行う取り組みがよく知られている。今季は史上初の欧州開催としてレッドソックス―ヤンキース戦を英国ロンドンで実施。他にもこれまでプエルトリコ、メキシコ、日本、オーストラリアで開催している。その一方で、米国内でも16年7月にはノースカロライナ州フォートブラッグの陸軍基地内でブレーブス―マーリンズ戦を行い、当時マ軍のイチローも出場。今月18日にはリトルリーグの聖地であるペンシルベニア州ウィリアムズポートで、パイレーツ―カブス戦を行った。

 本拠地以外での試合開催。日米で方法論は違えど、「野球振興」という意味での目的、意義は共通している。大リーグ機構のロブ・マンフレッド・コミッショナーは、「フィールド・オブ・ドリームス」の舞台での開催に際し「野球が人々を結び付けるという映画の恒久的なメッセージを、この舞台で祝うことを楽しみにしている」とコメントした。残念ながら、来年の東京五輪で大リーガーが派遣される予定は現時点でないが、五輪決勝の5日後に行われるこの一戦を、興味深く見届けたい。(記者コラム・大林 幹雄)

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