日大アメフト問題。真実解明にはまず過去にさかのぼっての徹底調査を

[ 2018年5月26日 09:00 ]

23日、謝罪会見を行った内田前監督(右)と井上コーチ
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 【藤山健二の独立独歩】日大アメリカンフットボール部員の反則行為を巡る騒動は一向に収まる気配がない。アメフトが大好きだった20歳の学生がなぜあんな愚行をするに至ったのか。学生の言う通り、監督やコーチに指示されたものなのか。それとも監督やコーチが主張するように「思い切りぶつかれ」という意味で使った「つぶせ」を学生が勝手に曲解して暴走したのか。

 世論の支持は圧倒的に学生の側にあるが、それを証明する決定的な証拠は残念ながらまだ見つかっていない。当事者間での言った言わないは録音テープでもない限り立証のしようがなく、学内に第三者委員会を立ち上げようが、スポーツ庁がいくら聞き取り調査をしようが、今のままでは永久に真実は見えてこない。

 もし首脳陣が最初から、後々問題になった時のことまで考えてわざと意図的に「つぶせ」という抽象的な表現で学生に卑劣な反則行為を促し、いざとなったら「学生が勝手に意味を取り違えた」と言って逃げようと考えていたのだとしたらまさに言語道断だが、曲がりなりにもスポーツをやる人間がそこまで悪人だとは思えないし、思いたくもない。だが、百歩譲って監督、コーチの会見での発言が真実だとしても、それならなぜ学生は指示の意味を取り違えたのかという大きな疑問が残る。「相手をつぶせ」という指示自体は決して珍しいことではない。それが単なる激励の言葉であることは言う方も言われる方もちゃんと分かっているからだ。

 しかし今回はまったく違う。学生は首脳陣の「つぶせ」という指示を、即座に「反則をしろ」という意味だと解釈したのだ。これは日大側が主張するように「コミュニケーションの不足」などという生やさしいものではない。極めて異常と言っていい。なぜ即座にそう理解したのか、そう判断するに至った経緯を徹底的に究明することこそが、今一番求められていることなのではないか。

 事件前後の数日間だけを調べても、今回の事件の全容は見えてこない。学生が入学してから反則行為に至るまでの心の変化はもちろん、指導部が現体制になってからの練習内容やミーティングなど、はるか過去にさかのぼって徹底的に調査すべきだ。学内の運動部という閉鎖された社会で、いったい何が行われていたのか。それが分かれば、今回の事件の責任の所在も自ずと明らかになるはずだ。(編集委員)

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2018年5月26日のニュース