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こだわり旬の旅

【長野・東北信】信州シルク回廊を巡る―蔵の街・須坂から上田紬を生んだ城下町へ 伝統の機織り体験も

[ 2024年1月1日 13:00 ]

蔵造りの建物が並ぶ須坂市の蔵の町並み。手前が蔵のまち観光交流センター
Photo By スポニチ

 「蚕糸王国」として君臨した長野県のシルク産業・文化を観光に結びつけようと展開されている「信州シルク回廊」。県内15市町村が信州シルクロード連携連携協議会を立ち上げ、同産業の関連施設や寺院、城跡などを巡り、シルク&カルチャーツーリズムを楽しんでもらうのが狙い。中国と欧州を結んだ「シルクロード」を連想させる回廊にウキウキ気分で向かった。

 本場のシルクロードが全長6400キロ以上なのに対し、日本版シルクロードは東西約70キロ、南北130キロと、両方向足してもわずか3割強の規模。それでも、明治から大正期にかけ蚕糸業で全国一だった長野県だけに、シルク&カルチャーツーリズムでは負けていないような気がした。

 今回歩いたのは東北信エリア。まずは30段ひな飾りや桜の臥竜公園などで知られる須坂市を訪ねたが、実は明治から昭和時代にかけて栄えたシルクの街だった。長野電鉄須坂駅から徒歩約13分の中心街、十字になった街道沿いには、蔵のまち観光交流センターなど当時の歴史を伝える蔵造りの建物が並び、レトロな雰囲気を醸し出している。

 “蔵の町並み”にある「ふれあい館まゆぐら」もその一つ。明治時代に建てられた旧田尻製糸の繭蔵を移転、改築したもので、館内には須坂の養蚕・製糸業を支えた器具や資料を展示。国の登録有形文化財で近代化産業遺産の3階建ての建物は、外からはしごをかけて繭の出し入れをしたという小窓が並び、当時の町並みを感じさせた。

 そんな須坂の一時代前、江戸後期から蚕種(カイコの卵)製造の中心地となったのが隣の上田市。こちらも真田氏と上田城で知られるが、一方で結城、大島と並ぶ「三大紬」と称される上田紬の街でもあるのだ。材料の出ガラ繭(カイコが蛾になって出た後の繭)が豊富で良質だったことから、紬織が栄えて生まれたという上田紬。1927年(昭和2)に設立された老舗「藤本つむぎ工房」で、その機織りを体験した。

 「上田紬はクズ繭(出ガラ繭)からできてるんです」とジョークを交えながら指導してくれたのは3代目の佐藤元政さん(49)。生糸を経糸(たていと)に、真綿から紡いだ紬糸を緯糸(よこいと)に織るのが上田紬の特徴で、言われた通り、機織り機に座り、ピンと張られた経糸に緯糸を渡し、両足で踏み木を踏み換えトントンと筬(おさ)を打ち込んでいく。

 体験は90分で花瓶敷き(27×17センチ)を作るのだが、時間が20分しかなく、出来上がったのは4分の1ほどの大きさ。それでも、紬を織りなすリズムは心地よく、♪縦の糸はあなた 横の糸は私…と中島みゆきの「糸」を口ずさみたくなるほど。帰路、北陸新幹線上田駅に歩いて向かう約15分の道すがら、シルクのように柔らかくて穏やかな気分になっていた。

 ▽行かれる方へ 車は中央道須坂長野東IC利用。須坂から上田へは来るまで約50分、電車では約1時間半。まゆぐらは入場無料。機織り体験は2500円。問い合わせはまゆぐら=(電)026(248)6255、藤本つむぎ工房=(電)0268(22)0900。
      

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