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こだわり旬の旅

【福井】よみがえる朝倉氏の栄華…一乗谷朝倉氏遺跡で戦国時代にタイムスリップ

[ 2022年11月2日 20:00 ]

建築家の内藤廣氏がデザインした一乗谷朝倉氏遺跡博物館。主人公に部下が従事するような建物の並びが印象的
Photo By スポニチ

 24年春に新幹線が開業予定の福井県に新名所が誕生した。福井市の「一乗谷朝倉氏遺跡博物館」。戦国大名として栄えた越前朝倉氏に関する展示施設で、隣接する同遺跡見学を楽しむためのゲートウェイ(玄関口)だ。同県にはほかにも恐竜博物館、年縞(ねんこう)博物館など、県立博物館がいろいろ。絶景・三方五湖を眺めながら“ミュージアムツーリズム”としゃれ込んだ。

 真っ先に訪ねたのが、10月1日にオープンした一乗谷朝倉氏遺跡博物館(愛称は朝倉とミュージアムを合わせた「あさみゅー」)。2階建て、延べ床面積5200平方メートルの館内では、朝倉氏の歴史と遺跡発掘の経緯をミニシアターや約170万点の出土品をもとにした展示などで紹介しているが、驚いたのは1階に露出展示された「石敷遺構」。同館建設の際に見つかった遺跡で、幅6メートル、長さ38メートルにわたり小石がびっしり。戦国時代の川湊の船着き場か道路とみられるが、いきなりの遺跡遭遇に息をのんだ。

 驚きは止まらない。5代103年にわたり栄えた越前朝倉氏が織田信長の戦火を受け滅びてから約450年。5代義景が暮らした朝倉館(やかた)の一部が2階展示室に再現された。6400平方メートルのうちの800平方メートル。中でも目を引いたのが室町時代の15代将軍、足利義昭を迎えたという会所。24畳もの広さで、500年以上前に描かれた大徳寺真珠庵蔵「四季花鳥図」の復元模写を障壁画として展示。格調高いたたずまいが朝倉氏の栄華をしのばせた。

 さらに隣の展示室には、城下町の巨大ジオラマが30分の1のスケールで広がる。周囲に置かれたタブレットを操作するとストリートビューを表示。建物や町の風景だけでなく、人々が表情豊かに生活する様子が見られ、町の中に紛れ込んだような気分だ。「朝倉氏遺跡は1967年に発見されたが、朝倉館や城下町を正確に再現できたのは建物の礎石や遺物が良好な状態で残っていたから」と博物館館長の清水邦夫さん。同遺跡は全国でも唯一無二の存在という。

 バスで約5分、県道18号線沿いに流れる一乗谷川の両側に南北約1・7キロにわたりたたずむ遺跡に行くと、それがよく分かる。朝倉館跡は山城跡が残る一条城山(標高436メートル)の麓にあり、高台から見ると数多くの礎石がくっきり。上には何もないが、博物館で再現館を見たせいか、建物の姿が目に浮かぶようだ。

 反対側には武家屋敷や職人たちの町屋などの復原町並が200メートル続く。敵の進入に備え、先が見えないよう壁がカーブしたり鍵形になっており、タイムスリップしたよう。「これも礎石が残っていたおかげ。発掘はまだ1割ほどで、新たな遺物が出てくるかも」とガイドの岡田光輝さん。確かに博物館の石敷遺構は見つかったばかりの遺構で、新発見への期待は増すばかり。朝倉氏遺跡は400年の眠りからまだ覚めたばかりだ。

 ▽行かれる方へ JR福井駅からバスで25分。車は北陸道福井ICから約10分。11月27日までの土日祝日には博物館―遺跡間に無料バス運行。入場料は博物館700円(要Web予約)、復原町並330円、共通券820円。博物館はネットで予約。問い合わせは博物館=(電)0776(41)7700、遺跡事務局=(電)同2173。 

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