×

こだわり旬の旅

【長崎・五島】「舞いあがれ!」で話題 五島列島で空海ゆかりの地を巡る、遣唐使はここから旅立った

[ 2022年12月5日 19:00 ]

城岳展望台から望む東シナ海と白石湾(左下)。まさに絶景だ
Photo By スポニチ

 NHKテレビ小説「舞いあがれ!」の主人公の古里として話題の長崎県は五島列島。キリスト教の教会群が世界遺産登録された“祈りの島”だが、約1200年前の遣唐使ゆかりの寺院なども日本遺産として存在。もう一つの“祈り”が注目されている。今年1月に日本ジオパークに認定され、海岸線や地層などの景観美も加わった列島最大の島、五島市・福江島を訪ねた。

 祈りはキリスト教だけのものではなかった。長崎港から西約100キロ、ジェットフォイルで約1時間25分。人口(約3万5000人)の約9割が仏教徒という五島市の中心地、面積約326平方キロの福江島には、真言宗の祖、空海ゆかりの地が各所に存在していた。

 804年、空海は最澄とともに遣唐使として大陸に渡ったが、その船の航跡は福江港から車で約30分、城岳(標高216メートル)山頂に近い城岳展望台からマリンブルーの海を望む大パノラマでしのぶことができる。「空海が乗った船は右手から来て、真下の白石湾に入り寄港。船体を修理して食料を補給、風待ちをして大陸に向かったんです」とガイドの川口進さん。

 展望台から10分も走ると、その白石湾の入り口にある魚津ヶ崎(ぎょうがさき)公園に到着。「舞いあがれ!」のロケでバラモン凧が揚げられた絶景スポットで、「遣唐使船寄泊地」の碑が立つ。そこから湾沿いに約10分。白石港そばのお堂には船からの綱をつないだという「ともづな石」が祭られている。高さ約1メートルだが、「実際は6メートルあり、下は地中に埋まっているそうで、時の移ろいを感じさせた。

 同港を出た空海らは北西部の三井楽(みいらく)半島沖を航行。その先端の柏崎公園が日本の見納めとなった地で、同港から車で約15分の同公園には、空海が書物に残した「辞本涯」という言葉が刻まれた記念碑と空海の石像が建つ。辞本涯とは「日本の果てを去る」という意味で、眼前に広がる東シナ海を見ていたら、命をかけて唐に渡った空海らの勇気と偉業に頭が下がる思いだった。

 仏教界の若きリーダーだった最澄に対し、学問僧だった空海は20年留学するはずも、2年で帰国。途中、暴風雨に遭い、福江港から車で約50分の大宝港に寄港。近くの大宝寺で真言密教を説いたことから、同寺は「西の高野山」と呼ばれることに。本殿には最澄が寄進した十一面観音や左甚五郎作の猿の彫刻があり、そっと手を合わせた。

 空海は、縁の深い「虚空蔵菩薩」が安置されている五島最古の木造建築の明星院にも参籠。福江港から車で約15分の距離にあり、本堂にはその菩薩が鎮座。狩野派の大坪玄能による121枚の極彩色の花鳥図が描かれた格子天井は必見だ。

 ともづな石以降の巡回地はすべて日本遺産。明星院の名は、空海が明けの明星から光が差すのを見て付けたといわれるが、仏教の祈りに光が差すのも遠くはなさそうだ。

 ▽行かれる方へ カーフェリーでは長崎港から3時間10分。飛行機では長崎空港から約30分。ガイド料は1時間2000円(20人まで)。問い合わせは五島市観光協会=(電)0959(72)2963、同市ふるさとガイドの会=(電)同(88)9075。

続きを表示

この記事のフォト

バックナンバー

もっと見る