「TOKYO MER」新作SP 脚本・黒岩勉氏が語る作劇 連ドラ決め手は「ERカー」海外舞台も視野

[ 2023年4月16日 07:00 ]

「TOKYO MER~隅田川ミッション~」。現場に駆けつける喜多見幸太(鈴木亮平)(C)TBS
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 俳優の鈴木亮平(40)が主演を務め、新しい医療ドラマとして大ヒットした2021年7月期のTBS日曜劇場「TOKYO MER~走る緊急救命室~」の新作スペシャルドラマ「TOKYO MER~隅田川ミッション~」が16日(後9・00~10・19)に放送される。劇場版(今月28日公開)に先立ち、完全撮り下ろしで約1年半ぶりの復活。連続ドラマに続き、SPドラマ&映画版の脚本も担当した黒岩勉氏(49)に作劇の舞台裏を聞いた。

 「僕のヤバイ妻」「グランメゾン東京」「マイファミリー」などの話題作を生み続ける黒岩氏がオリジナル脚本を手掛けた本格救命医療ドラマ。都知事の号令の下、新設された救命救急のプロフェッショナルチーム「TOKYO MER」の奮闘を活写し、SNS上などで大反響。コロナ下の医療従事者に勇気を与えた。

 「MER」とは「モバイル・エマージェンシー・ルーム」の略称。チームは最新医療機器とオペ室を搭載した大型車両“動く手術室”「ERカー」を駆使。危険極まりない事故・災害・事件の現場に駆けつけ、救命活動にあたる。

 映画化は22年1月に発表され、今回は劇場版公開を記念したSPドラマ。黒岩氏、松木彩監督、主要キャストが続投した。

 全11話の連ドラは「危機的シチュエーション+人間ドラマ・社会的メッセージ」の構成に毎回、頭をひねり「1話の脚本を作るのに2、3話分のカロリーを消費したような気がします」と最終回インタビューで苦労も語っていた黒岩氏だが「やっぱり連ドラの終盤は寂しさもありましたから、映画化は率直にうれしかったですね」と“MERチームのその後”を描けることに喜びもひとしお。

 連ドラは予算や撮影日程の兼ね合いもあり、事件・事故の設定に「火」と「水」は使えず。また、子どもの頃にワクワクした「戦隊ヒーローもの」のように、ライバルチームの構想も当初からあったが「連ドラの時に難しかった“火”とライバルチームが劇場版なら両方OKということで、ストーリーを考えるのは大変さよりも楽しさがありました」。映画は横浜・ランドマークタワーで爆発事故が発生、エリート集団「YOKOHAMA MER」が登場する。

 劇場版の後、スペシャルドラマの制作が決定。映画の脚本を書き上げ“やり切った感”もあったが、残っていた水のシチュエーションから東京・隅田川を舞台にした。

 「TOKYO MER」の正式認可(連ドラ最終回)から半年後。全国の政令指定都市にMERを展開するため、チームを去る音羽尚(賀来賢人)の代わりとなるセカンドドクター候補として、音羽と同じ厚生労働省の医系技官・青戸達也(伊藤淳史)が派遣される。その矢先、隅田川を航行中だった屋形船と大型水上バスの衝突事故が発生。コントロールを失い、暴走する屋形船の中には、弦巻比奈(中条あやみ)が心臓手術を担当したばかりの幼い女の子の姿も…。チーフドクター・喜多見幸太(鈴木亮平)率いるMERのメンバーたちは、決死の作戦に挑む。

 「待っているだけじゃ、助けられない命がある」――。アクション映画に勝るとも劣らないスピード感とスケール感、特撮ドラマのようなヒーロー感とチーム感が視聴者の心をわしづかみに。毎回、極限のオペが行われるスリリングな展開に加え、同局看板枠・日曜劇場初主演となった鈴木の熱血ぶりや的確な処置、音羽役・賀来のツンデレぶりなども話題沸騰。最終回(21年9月12日)の平均世帯視聴率は19・5%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)。番組最高を更新して有終の美を飾り、同年夏ドラマNo・1のヒット作となった。

 制作サイドからのオファーは「病院を舞台にした救命医療もの」。ただ、米ドラマ「ER緊急救命室」などを筆頭に、名作も数多くあるため、黒岩氏は「お誘いいただいたのに生意気だったんですけど、事故や災害の現場に出ていく医療チームを描いてみたいとご提案しました。例えば、タイムサスペンスが展開される中で医療テントを立ててオペをするような、スピード感があるものを作りたかったんです」。大映テレビの渡辺良介プロデューサーを中心に取材が始まると、医療関係者から「その場でオペができる車みたいなものがあると最高ですよね」という話が飛び出し「ERカー」の誕生につながった。

 「主人公のキャラクターだったり、手を替え品を替えても、病院内を舞台に新しい救命医療ドラマを作るのには限界があるんじゃないかと。医師の方から出向いていかないと、患者を助けられない。フワッとイメージしていたものが、ERカーの存在によって固まっていきました。この時点で既に、様々な色のERカーが出てきたら面白くなりそう、とライバルチームのことも頭に浮かんでいました(笑)」と手応えを感じた決め手を明かした。

 そして、第1話(21年7月4日)冒頭、MER発足式典中にバスとトラックの衝突事故が発生し、チームはいきなり緊急出動。現場到着からバス乗客、トラック運転手の救出まで、オンエア上は約12分。「見始めたら“死者0”が確認されるまで目が離せなくなる。じっくり味わうドラマというより、実際の事件・事故現場の生中継を見ているような感覚」を意識して執筆したが、鈴木を中心にキャスト・スタッフがものの見事に体現。臨場感、緊迫感あふれる映像をスピーディーに畳み掛けた。

 最後はトラック運転席でそのままオペ。「おそらく誰も演じたことも、見たこともないようなシーンが続いて、ウソくさくなってもおかしくないと思うんですが、こういう医師が本当にいるんじゃないかと思わせてくれる亮平さんの圧倒的な説得力ですよね。第1話冒頭の映像を拝見した時、この作品は絶対イケると確信したのを鮮明に覚えています」と振り返った。

 次回作について尋ねると「勝手なことを言わせていただくなら(笑)、『LA(ロサンゼルス) MER』とか、海外、アジア圏とのコラボレーションが実現したら面白いですよね」と構想を披露。連ドラ版は21年10月から動画配信サービス「Disney+(ディズニープラス)」で世界配信されており、海外の視聴者にも好評という。「自分が言うのもおこがましいんですけど、日本の文化を知らない人が見ても非常に分かりやすい内容だと思うんです。根本にあるテーマは、命の大切さ。これは古今東西、変わらないものですから」。SPドラマ・劇場版の先に、物語としても海外展開を視野に入れた。

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