「シーナ&ロケッツ」鮎川誠さん死去 74歳、膵臓がん 15年に旅立った妻・シーナさんの元へ

[ 2023年1月31日 05:30 ]

鮎川誠さん
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 ロックバンド「シーナ&ロケッツ」のギタリストでミュージシャンの鮎川誠(あゆかわ・まこと)さんが29日午前5時47分、膵臓(すいぞう)がんのため都内の自宅で死去した。74歳。福岡県出身。2月4日に東京・下北沢の森巖寺で通夜・葬儀を兼ねた「ロック葬」を執り行い、同5日に家族のみで告別式を営む。喪主はモデルで長女の鮎川陽子(ようこ)。2015年に最愛の妻シーナさん(享年61)に先立たれたが、遺志を継いで「シナロケ」の活動を続けた。

 所属事務所によると、昨年5月、膵臓がんが発覚し医師から余命5カ月ほどと宣告を受けた。本人の希望で公表はせず、ライブの合間に治療を続けながら全国ツアーを続行。「自分が死ぬまでの間に一本でも多くシーナ&ロケッツのライブをやりたい」との覚悟で臨んだ。その決意を示すように昨年のライブ本数はここ数年で最多だったという。

 昨年末、激しい腹痛で一時入院。高熱が続き、重篤な状態が続いていた。内田裕也さんが始めた恒例の年越しライブ「ニューイヤー・ロックフェスティバル」への出演は見合わせ。年明けの京都公演も取りやめた。この1カ月間は自宅で回復に努めたものの、最期は娘たち家族に見守られ、眠るように息を引き取った。亡くなる直前まで未発表曲の作品化などを看病してくれた娘たちに話しており、事務所は「最期の瞬間までロックに身をささげた生涯でした」と称えた。

 福岡県久留米市生まれ。父は米国軍人で母は日本人。父の転任で離れ離れになったため、顔を知らないまま育ったが、父が残していったフランク・シナトラやビング・クロスビーのレコードが洋楽との出合いとなった。

 70年に篠山哲雄や柴山俊之らとロックバンド「サンハウス」を結成。九大卒業翌年の75年にメジャーデビューを果たした。日本ロックのスタンダードナンバーにもなっている「レモンティー」(75年発表)が代表曲。バンドは福岡・博多を拠点に活動し、80年代に流行した「めんたいロック」の草分けとなった。リードギタリスト兼作曲家を78年のバンド解散まで担当した。

 サンハウス時代に演奏を聴きに来たシーナ(悦子さん)と出会い、シーナさんの妊娠を機に76年に結婚。双子の女児のパパとなった。78年に夫婦で上京し、シーナ&ロケッツを結成。イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)との親交も深く、79年にはYMOのサポートを受けてアルバム「真空パック」を発表し、シングル「ユー・メイ・ドリーム」が日本航空のCMに起用されブレークした。トレードマークは黒メガネ。俳優としても存在感を発揮した。

 シナロケは13年に結成35周年を迎え、全国25カ所でツアーを実施。15年2月にはシーナさんが子宮頸(けい)がんのため61歳で急逝。喪失感の消えないまま、シーナさんの遺志でバンド活動の継続を明言した。昨年12月19日の京都公演が最後のライブ。10曲を演奏する魂のステージとなった。ロックと家族を愛した鮎川さん。通夜、葬儀は最愛の妻と同じ「ロック葬」で送られる。

 ≪モデルにロッカー 3人の娘も活躍中≫鮎川さんは3人の娘がおり、長女はモデルの鮎川陽子(46)、次女は鮎川純子(46)で双子。純子と三女の知慧子(39)はともにロックバンド「DARKSIDE MIRRORS」で活躍中だ。陽子はツイッターで父の死去を報告し「ぜったい良くなるって信じていたのに、回復の願いがかなわず、悲しくてしかたがありません。お父さんは世界一かっこいいロッカーでした」と悼んだ。

 ≪ラーメンCM九州弁で注目≫1980年代には日清食品「はかたんもんらーめん」のCMでも鮎川さんは注目を集めた。サングラス姿でギターを抱えて登場すると、九州弁で「長か、せからしか名前やね。ばってん、はかたんもんらーめんって呼んじゃんしゃい」と語るシンプルな作品。訴えかけるような方言が強烈なインパクトを残した。

 鮎川 誠(あゆかわ・まこと)1948年(昭23)5月2日生まれ、福岡県出身。サンハウスのギタリストとして75年にデビューし、ブルースを基調とするロックを展開した。俳優としてはフジテレビ「愛情物語」(93年)、NHK朝の連続テレビ小説「ちゅらさん」(01年)などに出演。黒人ブルース音楽の研究家としても知られる。

 ▼膵臓がん 膵臓は「沈黙の臓器」と呼ばれ、病気の初期症状が出にくくがんの発見も難しい。2019年に診断された人は約4万3000人。がんが発見された時はすでに進行していることが多く、手術ができる人は約20%。5年生存率は女性8.1%、男性8.9%で、全がんの中で最も低い。進行してくると、腹痛、食欲不振、腹部膨満感、黄疸(おうだん)などの症状が出る。糖尿病や喫煙、血縁者に膵臓がんがいる場合などが発生リスクを高める。

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2023年1月31日のニュース