「ルパン三世」次元大介役50年 小林清志さん死去 89歳、ニヒルな低音ボイスで洋画吹き替えも

[ 2022年8月9日 05:30 ]

89歳で亡くなった小林清志さん
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 人気アニメ「ルパン三世」シリーズの次元大介役などで知られる声優の小林清志(こばやし・きよし)さんが7月30日午前7時6分、肺炎のため都内の自宅で亡くなった。89歳。東京都出身。葬儀は近親者で行った。喪主は妻芳枝(よしえ)さん。後日お別れ会を開く予定。ニヒルな低音で、主役や頼れる相棒、強力なライバルを数多く演じてきた声優界の巨星だった。

 小林さんは所属事務所の東京俳優生活協同組合(俳協)によると「家族に見守られ、眠るように亡くなった」という。高齢だが持病などはなく、突然体調を崩したという。

 昨年9月に次元大介役の勇退を発表。「ルパン。オレはそろそろずらかるぜ。あばよ」とコメントし、大塚明夫(62)に譲ったが、仕事は続けていた。最後の仕事は先月4日に収録が行われたCSチャンネル「ファミリー劇場」の「AKB48ネ申テレビ」のナレーション。今月半ばに予定される収録から後任が担当するという。

 子供の頃から英語好きで、洋画の翻訳を手掛けたことが縁で吹き替えを務めるようになり、米俳優のジェームズ・コバーンさんやトミー・リー・ジョーンズらの声を担当した。アニメの声優もするようになったのは30代半ば。渋みある落ち着いた低い声で、頼れる大人のキャラクターや、主人公を苦しめる難敵などを演じたほか、「ダウンタウンのガキの使いやあらへんで!!」や「SASUKE」のナレーションでも知られた。

 「妖怪人間ベム」のベムや、「巨人の星」のオズマ、「スペースコブラ」のクリスタル・ボーイらを演じたが、中でも38歳だった1971年から放送の「ルパン三世」シリーズで演じたルパンの相棒で拳銃の名手、次元大介は50年にわたって務めたハマリ役となった。小林さんは「それまで洋画の吹き替えでは悪役が多かったが、次元もそういう雰囲気があり、自分にぴったりの役だと思った」と語っていた。ダンディーでニヒルな雰囲気は、おちゃらけたルパンとの相性バッチリで、頼れる相棒としてファンの心に刻まれた。

 「ルパン三世」の作者で2019年に81歳で亡くなったモンキー・パンチさんは「荒野の七人」(1960年)のジェームズ・コバーンさんが次元のモデルと語ったが、コバーンさんは小林さんが吹き替えする俳優の一人。小林さんもコバーンさんを「特別な俳優」と公言し、次元については「可能な限り続けたい」と言い続けたキャラクター。小林さんと仕事したテレビ関係者は「小林さんは渋くてダンディーで、次元そのものだった」と語った。

 次元と同じくヘビースモーカーでもあった。関係者によると「次元のように、いつもタバコを吸っている印象だった」という。ここ2、3年は人前で吸うのは控えていたというが、周囲に「どうしてもやめられないんだよ」と話していた。

 幅広い世代に親しまれた国民的声優は、最期まで次元の面影を残したまま天国へ旅立った。

 ◇小林 清志(こばやし・きよし)1933年(昭8)1月11日生まれ、東京都出身。高校卒業後に日本大芸術学部演劇科に進学。在学中から俳優として活動。卒業後は「劇団泉座」に所属し、舞台俳優として活動するほか、脚本の翻訳も担当。58年から声優の仕事を始め、「鉄腕アトム」「妖怪人間ベム」「巨人の星」「タイガーマスク」などのアニメ作品に参加。17年に「声優アワード」で功労賞を受賞。

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