朗希にもあった小さな隙 ギャンブルじゃない 1安打で1得点は試合前からの阪神・岡田監督のプラン

[ 2023年6月5日 08:00 ]

交流戦   阪神2-0ロッテ ( 2023年6月4日    甲子園 )

<神・ロ>3回、ベンチから佐々木朗(手前)を見つめる岡田監督(左から3人目)(撮影・北條 貴史)
Photo By スポニチ

 【畑野理之の談々畑】6回、先頭の中野拓夢が四球を選んで出塁すると、岡田彰布監督の勝負カンがここだと反応した。次打者シェルドン・ノイジーのカウント1―1から中野にスタートを切らせたのだ。ノイジーも真っすぐを振ってランエンドヒットの形となったが、ファウル。すると4球目も連続でスタートを切らせた。結果はフォークボールがワンバウンドとなり、無死二塁とした。

 スコアは0―0。チームはまだ、佐々木朗希の前に1本もヒットが打てておらず、普通に攻撃するよりも、仕掛けて1本で1点を取りにいった。ノイジーは三振に倒れて1死となったものの、大山悠輔の4球目に再び暴投で1死三塁。次の5球目を二塁頭上を越える右前打で先制した。中野が三塁まで進み、ロッテの内野陣が前進するなど、動いたことすべてが好転した。

 どうやって得点しようか?1安打で1得点は試合前からのプランにあったと思う。侍ジャパンのエース格でもある佐々木朗からは安打すら難しいことも予想していただろう。

 「ランナーが出たら走れと言うたんよ。連打は打てないから、いろんなことをして、そういうのがうまくいったよ」。試合後の岡田監督は、ギャンブルをしてたまたま運が良かったのではなく、確信があり、ここ一番の勝負手を打ったという表情だった。

 5月17日の中日戦を思い出した。2―0の6回に先頭で右前打を放った佐藤輝明に初球スチールのサインを出して成功。内野ゴロで三塁へ進み、木浪聖也の中犠飛で、この時も1安打で1点を取った。これは臆測ではないと思っているが、岡田監督は涌井の投球フォームのクセ、もしくはけん制球のタイミングを知っていたからこその佐藤輝への盗塁指示だったと思う。

 そして、おそらく佐々木朗にもあった小さな隙を突いてやろうと狙っていた。試合前の練習を見ていると、ほぼ連日、島田海吏や植田海ら足が速く代走で出る可能性のある選手が外野でスタートを切る練習をしている。この日も甲子園球場の右翼付近で、島田が誰かをイメージして何度も繰り返していた。

 もちろん1点勝負に持ち込んだ才木浩人の好投があればこそだし、そして大山が勝負手を実らせる適時打を放ったからこそだが、岡田監督には佐々木朗を沈めた会心の「1点」だったはずだ。

続きを表示

「始球式」特集記事

「落合博満」特集記事

2023年6月5日のニュース