国学院栃木が誇るデータ野球 “陰の戦力”がきっと新たな時代をつくる

[ 2022年8月17日 04:07 ]

第104回全国高校野球選手権大会第11日・3回戦   国学院栃木0―4九州学院 ( 2022年8月16日    甲子園 )

<九州学院・国学院栃木>応援団に一礼する国学院栃木ナイン(撮影・奥 調)
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 【秋村誠人の聖地誠論】アルプス席へ一礼した後のこと。国学院栃木の選手たちがスタンドに向かって何か言っているように見えた。それは「ありがとう」だったか。スタンドには、チームが誇るデータ班がいた。柄目直人監督が「うちのチームの肝」と絶賛する“陰の戦力”だ。寝る間も惜しんでデータを集めて、分析して、甲子園に吹かせた爽やかな風には新たな時代を感じた。

 0―4。九州学院の2年生エース・直江新に4安打に封じられた。「データは万全。だけど、データには出ない球威や切れ、データ以上のものが出た」。柄目監督が振り返る通り、それもまた甲子園なのだろう。時に力以上のものが出る。だから奇跡も起きる。

 そんな甲子園という舞台で、データ野球の歴史は古い。73年のこと。銚子商(千葉)は作新学院(栃木)の怪物・江川卓を倒すため、半年以上もかけて練習試合も含めて偵察し、徹底的に研究したという。名将・斉藤一之監督は「江川を倒さなければ日本一にはなれない」と宣言。その夏の甲子園で、延長12回の末に江川のサヨナラ押し出し四球で勝利した。江川の投球のクセなどを分析して生かし、まさに執念の怪物攻略だった。

 当時はデジカメなどがない時代。じかに見て得た情報が頼りだった。あれから50年弱。今や映像の入手は容易になり、国学院栃木はSNSも駆使しているという。調べたい相手と実際に対戦した選手たちにSNSを通じて感想を聞く。データに感性で厚みを持たせ、2回戦では昨夏の優勝校・智弁和歌山を撃破した。

 90年代に筆者はヤクルトを担当した。名将・野村克也監督の「ID野球」で「ID」とは「import data」の略。「データを取り入れる」という意味だが、当時渉外担当だった中島国章氏に「importには活用する、という意味もある」と教えてもらった。つまりデータを入手するだけでなく、どううまく活用するか。

 新時代を迎えたデータ野球。きっと、国学院栃木ならできるはずだ。時に力以上のものが出る甲子園で、データを巧みに使いこなすことが。(専門委員)

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2022年8月17日のニュース