“引力に逆らう打球”二松学舎大付・片井に怪物の予感

[ 2022年8月15日 04:04 ]

第104回全国高校野球選手権大会第9日・2回戦   二松学舎大付7―5社 ( 2022年8月14日    甲子園 )

<二松学舎大付・社>5回、中越え適時二塁打を放つ二松学舎・片井(撮影・井垣 忠夫)
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 【秋村誠人の聖地誠論】ゆっくりと、堂々と打席へ向かう。小走りに急いだりしない。それは貫禄とか、風格とかとはちょっと違う。1年生らしからぬ姿とでも言ったらいいのか。二松学舎大付の1年生4番・片井海斗には、新たな「怪物」の予感が漂っている。

 円陣や守備タイムでマウンドに集まったときなどは、なんだか少し遠慮がちにも思える。市原勝人監督によると「言葉数は多くない」タイプだそうだ。背番号は15。チームでは片井を含めて3人の1年生がベンチ入りしているが、先発メンバーに入っているのは片井だけだ。だから、控えめに見えるのか。ただ、打席で見せる姿だけは学年を全く感じさせない。

 衝撃を受けたのは、3回の左中間ソロとともに5回の中越え二塁打。1死三塁で、外寄り低めの138キロ直球を捉えた打球が低い弾道で中堅方向へ飛んだ。一度は捕球体勢に入ろうとした中堅手が次の瞬間、慌てて背走した。単に目測を誤ったわけではない。予想外の伸びだったのだろう。引力に逆らうかのような打球が、あっという間に中堅手の頭上を越えていった。「これは1年生の打球じゃない」。そう感じた人は多いはずだ。

 思えば、39年前にも1年生の4番の打球に衝撃を受けた。83年夏の甲子園決勝。PL学園(大阪)の4番・清原和博が外角球を得意の右方向への打撃で右中間へ打ち込んだ。打ったのはかなり遠く見えた外角低め。それを右中間へ。「なんであのコースの球を高校1年生があそこまで飛ばせるんだ」。大学3年だった筆者は、あの驚きを今も忘れない。それが清原の不滅の甲子園通算13本塁打の1本目。片井が3回に放ったアーチと5回の二塁打で、遠い記憶を呼び起こしてくれた。

 市原監督は、OBの鈴木誠也(現カブス)と比べても1年の時点では片井が上と評した。伝説の清原以来で大先輩の鈴木よりも上。それだけ聞いてもワクワクする。佳境を迎える甲子園。片井の打球が熱い夏をさらに熱くしてくれそうだ。(専門委員)

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