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【内田雅也の追球】遠くに逃げながら沈んでいく球 右打者には「死んだ魚」は捕まえづらい

[ 2022年5月23日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神4-0巨人 ( 2022年5月22日    甲子園 )

<神・巨>5回、小林は伊藤将(左)から二塁打を放つ(撮影・坂田 高浩)
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 プロ初完封を飾った阪神・伊藤将司の武器、ツーシームやチェンジアップは右打者から見て、遠くに逃げながら沈んでいく。巨人先発・高橋優貴が得意のスクリューボールと軌道が似ている。

 左腕特有のスクリューボールはアメリカで文字通りフェードアウェイ(消え去る)やデッド・フィッシュ(死んだ魚)と呼ばれる。海中をひらりふわりと漂う様から連想した俗称だろう。

 この両左腕は投手有利とされる左対左の左打者より、右打者の方が被打率が低い。「死んだ魚」は捕まえづらいのだ。

 では、どう打つのか。

 巨人の右打者は反対方向(右方向)へ打つ姿勢でいたようだ。相撲でいう「押っつけ」のように右脇を絞って、逃げ行く球についていく。

 ところが「魚」を捕らえた安打は8回表の北村拓己右前打が初安打だった。岡本和真は9回表に右前へゴロで安打したが、それまでは遊ゴロ併殺打に投ゴロと「魚」に戸惑った。中田翔も遊ゴロに引っかかっている。

 伊藤将は恐らく、相手の「押っつけ」は先刻承知で、逆に内角カッターや外角速球を生かした。

 「魚」を初めて快打したのは今月3日以来の先発出場となる小林誠司だった。5回表2死、初球ツーシームを三塁線突破の二塁打にした。3回表にも外角低めチェンジアップを遊撃左に安打性のゴロを放っている。引っ張っての快打だった。

 阪神で打撃コーチも務めた広澤克実(本紙評論家)は「魚」を持つ左腕には「引っ張れる球を待つ」という。スクリューが得意の中日・山本昌を打ち込んでいた秋山幸二(元ソフトバンク監督)に聞いた答えだそうだ。引退後の話である。この姿勢でいれば、消え去るボール球も見送れる。

 これを実践したのが大山悠輔だった。2回裏2死満塁。外角スクリューを三遊間突破の左前2点打した。初球の高めスクリュー(ファウル)もフルスイングしていた。

 高橋は3四球と制球難だったが、決め手を逃せば立ち直る。大山は見事に「魚」を捕らえ、降板に追いやったのだった。

 この日は47試合目だった。シーズン143試合の3分の1である。まだ3分の2も残っている。巨人に連勝、そして交流戦突入も契機に反撃に移りたい。美しい甲子園の夕焼けにそんな希望がわいてきた。=敬称略=(編集委員)

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