【内田雅也の追球】「打てる球は積極的に」弱気去った全球スイング

[ 2022年4月6日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神4-0DeNA ( 2022年4月5日    甲子園 )

<神・D>初回無死、阪神・近本は中前打を放つ(投手・ロメロ)(撮影・坂田 高浩)
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 阪神各打者の積極姿勢が見えるように、4回降板に追い込んだDeNA先発フェルナンド・ロメロの投球内訳を示す。

 ※見=見逃し、振=空振り、フ=ファウル、打=打球、ボ=ボール

回 見 振 フ 打 ボ
1 0 1 3 5 8
2 0 2 3 5 3
3 1 4 3 1 4
4 1 0 3 3 3
計 2 7 12 14 18

 53球中ストライク35球で見逃しは2球だけ。3回裏に糸原健斗がチェンジアップを見送るまで25球すべて打ちにいった。

 際だったのは立ち上がりだ。1回裏、近本光司が高めボール球でも打ちに出て中前打。暴投で無死二塁となり、進塁打を狙う中野拓夢が低めボールぎみツーシームを引っ張り一塁左を破った。わずか4球で1点の速攻だった。佐藤輝明の今季1号も初球だった。

 9連敗目を喫した3日の東京ドームでは巨人先発の赤星優志に7回までストライク67球のうち、見送りが17球あった。新人との初対戦で様子見もあったろう。いや、1勝もしていない状況で知らぬ間に消極的になっていたのかもしれない。

 2013~19年と東大監督を務めた浜田一志がツイッターで「8連敗! だからどうした? 俺は94連敗だぞ」、さらに「9連敗! 弱気の虫に要注意」とつぶやいていた。連敗脱出を果たした指揮官の声は教訓的と言えた。阪神は弱気を去り、強気をふりしぼって向かっていったのだ。

 ロメロの昨季カウント別投手成績をみると、0ストライク時の被打率が3割6分9厘、1ストライク時も3割6分8厘だが、2ストライク時は1割8分1厘と一気に下がる。追い込まれるまでが勝負だった。試合前から「打てる球は積極的に」と確認していたはずだ。

 初勝利の後、監督・矢野燿大は「結果が出る、出ないでそう見られるのは仕方ない」とし「超積極的にやるのがうちの野球。これからもずっと――」と前を向いた。

 積極性はロメロ攻略のカギとなった2度の暴投でも見えた。1回裏の近本二進、2回裏の小幡竜平生還だ。ともにバウンドした投球を捕手がそらしたのだが、角度から判断は難しく、憤死を恐れぬ前向き姿勢もあった。

 そして何より、今季初の甲子園の空気、大入り観衆の熱気が背中を押していた。 =敬称略= (編集委員)

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