新型コロナ集団感染の窮地に見た楽天30代前半の「ベテラン」たちの頼もしさ

[ 2022年4月6日 13:00 ]

楽天の(左から)田中将、銀次、鈴木大、浅村
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 第6波なのか、はたまた第7波の入り口にいるのか。全国的に新型コロナウイルスの新規感染者は増加傾向にあり、プロ野球界も例外ではない。楽天では開幕以降に選手9人、コーチ1人の計10人が感染する異常事態に見舞われている。

 変異を続けるウイルスは、12球団でもっとも厳しいと自負する感染対策の網をかいくぐった。大規模病院のコロナ病棟で勤務する知人の医師が「感染予防を徹底することで外部からウイルスが入り込むことはある程度、抑えることはできる。ただ、一度入ってきてしまうと防ぎようがないところはある。施設や家庭内などで連鎖的に広がってしまうように」と話していたことを思い出す。
 4月2、3日のソフトバンク戦(楽天生命パーク)は中止(延期)となり、4日ぶりの試合となった5日の西武戦(同)は7―3で快勝した。大げさかもしれないが、記者はこの試合がシーズン序盤のターニングポイントになるかもしれないと思っていた。そんな一戦で勝利の立役者になったのが、田中将、鈴木大、銀次、浅村といった経験豊富な主力組だった。彼らは年齢的には30代前半。プロ野球界では「中堅」にカテゴライズされる世代だが、楽天は若い選手が多いことから、あえて「ベテラン」と呼ばせてもらう。

 まずは田中将。「イマイチでしたね。特に初回とかは全然だった」と振り返るが、経験に裏打ちされた修正能力を駆使して尻上がりに調子を上げた。何度も雄叫びを上げ、時に笑顔を見せたり。マウンド上で喜怒哀楽をむき出しにしながら7回2失点で試合をつくり、石井監督も「苦しい立ち上がりからここまでもってこられるのは素晴らしい能力。経験値かな」と目を細めた。

 初回の先制の2点適時二塁打を含む3安打3打点の活躍で打線をけん引した鈴木大。「離脱している選手の気持ちを考えるとやりきれない」。自身もキャンプイン直前の1月末に新型コロナウイルスに感染しており、仲間の思いも背負って戦った。指揮官は「本当にいいところで打ってくれて、キーマンになって戦ってくれた」と賛辞を送った。7回には浅村が適時二塁打を放ち、代打・銀次の右犠飛で価値ある追加点を奪った。

 試合後、GMも兼務する石井監督は「経験豊かな選手がこういう活躍をしてくれるのは、本当に助かります」と謝意を示した。若手の存在は不可欠だが、フレッシュな力だけでは乗り越えられない壁が立ちふさがることもある。窮地でこそベテランはチームを動かす推進力にならなければいけない。これは、どの組織にも共通しているのではないか。そんなことを強く感じるコロナ禍でのゲームだった。(記者コラム・重光 晋太郎)

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2022年4月6日のニュース