只見が21世紀枠でセンバツ決定 日本有数豪雪地帯に春が来た 選手13人で銀世界から銀傘へ

[ 2022年1月29日 05:30 ]

センバツ出場32校決定

帽子を投げ喜びを爆発させた只見ナイン
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 分厚い白い壁と、歓喜のコントラストが鮮明だった。2メートル50センチの雪が覆うグラウンドで、喜びを爆発させた只見ナイン。吉津塁主将(2年)は「うれしい気持ちでいっぱいです」と涙をこらえきれなかった。

 21世紀枠の候補校に選出されてから約1カ月半。待ちに待った吉報に長谷川清之監督も「昨日から落ち着かなかった。一報を受けた瞬間は肩の荷が下りたような感じでした」とホッとした表情を浮かべた。

 奥会津で積雪により生活に支障が出る「特別豪雪地帯」に指定される日本有数の豪雪地帯。冬はグラウンドが使えず、駐輪場でのティーバッティングや筋力強化など、創意工夫した練習で実力をつけた。過疎化が進む地域で学校は「山村教育留学制度」により、全国各地から生徒を募集。野球部の活躍が、地元の活力となっていることも評価された。全校生徒86人で、選手は13人。それでも、昨秋の福島県大会では、春夏秋を通じて創部初の8強入り。接戦をモノにし、戦うごとに力をつけた。「突出した選手はいないので、守りで崩れないようなチームづくりを心掛けている」と指揮官。就任20年目で大舞台への出場権を得た。

 3人の投手陣を引っ張る、酒井悠来(2年)は「降り積もった“雪の壁”に投球して、開いた穴を狙うことで制球力を上げた。他にも、雪上ランニングで下半身や体幹を鍛えた」と胸を張る。

 只見町内では防災行政無線で選出が伝えられた。吉津主将は「目標に掲げる全力疾走を披露して、見ている人に元気を与えたい。特別なことはせず、自分たちの野球をもう一度、磨き上げたい」と初めて立つ聖地へ、力を込めた。(後藤 光志)

 ▽福島県只見町 福島県の西南に位置。西南部は新潟県に接し、伊南川、只見川など森林資源に恵まれている。ユネスコパークに東北で唯一認定されている、自然豊かな日本有数の豪雪地帯。昨年は積雪3メートルを記録した。奥会津地域一帯は過疎化、少子高齢化が加速し、只見町の人口は約4000人。只見高は町内唯一の高校で次年度から全学年1クラスになる予定となっている。

 ▽21世紀枠 甲子園への出場機会を広げるため01年に導入。練習環境のハンデ克服や地域貢献など、戦力以外の要素も加味する。秋季都道府県大会16強(加盟129校以上の場合は32強)以上を条件に全国9地区から1校ずつ候補校として推薦される。昨年は中止となった明治神宮大会枠がなかった影響で1枠増え、4校選出。今年は東(北海道~北信越)、西(近畿~九州)から1校ずつ、残り7校から1校を選んだ。最高成績は01年・宜野座(沖縄)と09年・利府(宮城)の4強。

 【センバツアラカルト】

 ☆初出場 昨年より4校少ない6校。春夏通じての初出場は和歌山東と、21世紀枠の只見、丹生、大分舞鶴の計4校。

 ☆最多出場 天理の26度目が最多。広陵が25度目で続く。

 ☆お久しぶり 最長は日大三島の38年ぶり。長崎日大は23年ぶり、広島商は20年ぶりの出場。

 ☆優勝経験校 春の優勝校は浦和学院、敦賀気比、大阪桐蔭、天理、広陵、広島商、高知、鳴門の8校。夏だけの優勝は東洋大姫路。

 ☆アベック出場 福島、東京、福井、大阪、和歌山、広島の6都府県から2校が出場。

 ☆カタカナ校名 校名に「カタカナ」を含んだ学校のセンバツでの勝利はまだなく、クラークが初勝利に挑む。

 ☆行進曲 入場行進曲は男女2人組ユニット「YOASOBI」の「群青」。

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