盗塁成功の大谷が一塁に戻された判定 なぜ打者はアウトにならなかったのか

[ 2021年7月3日 17:04 ]

ア・リーグ   エンゼルス8ー7オリオールズ ( 2021年7月2日    アナハイム )

サヨナラのホームインを果たし、拳を突き上げる大谷(写真中)
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 エンゼルスの大谷翔平投手(26)が2日(日本時間3日)、本拠地でのオリオールズ戦に「2番・DH」で先発出場。第2、第3打席で2打席連発。9回には走塁でも魅せて、サヨナラ勝ちに貢献した。

 同点の9回1死から大谷が四球で出塁。カウント1―1から二塁へ盗塁を試みた。捕手の送球はワンバウンドで二塁に届き、悠々セーフと思われた。だが、球審は打者・レンドンが空振りしたバットが捕手のヘルメットに当たったと判定し、大谷は一塁へ戻された。

 疑問に思った人もいるだろう。打者の妨害であれば、打者はアウトになるのではないか――。実は打者のバットが捕手に当たるケースは守備妨害の中でも例外とされている。

 公認野球規則には【バットが、捕手または投球に当たり、審判員が故意ではないと判断した場合は、妨害とはしないが、走者の進塁を許さない】※抜粋表記※とある。打者・レンドンはアウトにならず、打つチャンスが与えられたが、あえなく三振。大谷は次打者の初球で再び盗塁を成功させてサヨナラにつなげた。

 今回起きた「走者を戻すだけ」という判定は他のケースにもある。それは「審判員の妨害」だ。記者は元NPB審判員で、そのケースを一度だけ経験した。2013年6月12日に甲子園で行われた阪神―広島の2軍戦だった。

 3回の阪神の攻撃。一塁走者・コンラッドが盗塁を試みた際、広島の捕手・白浜の送球しようとした右腕が、球審だった私のマスクに当たった。送球は大きく逸れ、コンラッドは二塁に悠々セーフ。このケースは「審判員の妨害」で走者は一塁へ戻される。

 投球モーションを盗み、セーフのタイミングだったコンラッドに申し訳なく思いながら、一塁へ帰塁させた。不利益が生じた阪神・平田監督には強く抗議を受けた。当然だ。審判員が選手のプレーを妨げることなど、あってはならない。いくら後悔しても足りないプレーだった。

 大谷のサヨナラ劇に胸が高まるとともに、前職時代の苦い規則適用を思い出した。 (柳内 遼平)

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