【内田雅也の追球】阪神 4点追う4回のバントは諦めない意思表示

[ 2016年8月31日 10:05 ]

<中・神>4点を追う4回無死一塁、送りバントを決める坂本

セ・リーグ 阪神3―9中日

(8月30日 ナゴヤD)
 阪神ベンチは4点ビハインドの4回表、無死一塁で坂本誠志郎に送りバントを命じた。

 バントは1点を取りに行く戦法である。4点差で使うのは珍しい。異例である。ただし、回はまだ浅かった。すぐには追いつけずとも、次の1点を奪えば、勝機があると踏んでの作戦だろう。

 「ええ」と敗戦後、作戦兼バッテリーコーチ・矢野燿大が意図を話した。「あそこで1点でも取れれば、まだチャンスはあるとみていましたから。中日も後ろ(救援投手)が苦しいですしね」

 結果はバント成功の1死二塁から代打・江越大賀、上本博紀と凡退して得点はならなかった。

 さらに、このバントには、ともすれば荒れ気味になる空気を引き締める効果もあったとみる。何しろ、先発・藤浪晋太郎が1回裏、大量7失点した試合である。どんなチームであろうと、多少は粗い試合展開になる。それでも、あきらめないという不屈の姿勢を示す狙いもあったはずだ。

 矢野も「まだいける」と言った。「まだいける、という姿勢を示すと言いますかね。チームにも、それから相手にもね。あきらめていないんだというね」。実際、相手中日も5回裏、1死一塁から送りバントを使ってきた。4点差だが、油断ならない展開という空気が漂っていた。

 監督や首脳陣は言葉以上に、その作戦で選手を鼓舞しようとする。実は28日ヤクルト戦(甲子園)でも2点ビハインドの7回裏、無死一塁で坂本にバントさせていた。

 「もちろん、シーズン中に重要でない試合なんてありませんが、より重要と言いますか。もう、この時期ですからね。現状からすれば3位、クライマックスシリーズ(CS)出場が当面の目標になる。こんなこともするんだぞ、というね」。異例の作戦で選手たちに重要な時期なのだと訴えていたのである。

 台風が行き、名古屋の街にも涼やかな風が吹いていた。夏が終わろうとしている。阪神には夏休みの宿題が山積しているというのが実情だ。それでも秋はやってくる。

 この日、テレビ解説で訪れていた江夏豊は新選組副長、土方歳三のファンとして知られる。なぜか。浅田次郎との対談で「僕のなかの土方歳三は決してあきらめない人」と語っている=『新選組読本』(文芸春秋)=。

 そう、あきらめてはいけない。 =敬称略=
 (スポニチ本紙編集委員)

続きを表示

「大谷翔平」特集記事

「始球式」特集記事

2016年8月31日のニュース