求められている心の復興支援…熊本に“生”のプロ野球を

[ 2016年6月13日 09:00 ]

熊本県益城町でホークスOBによる野球教室が行われ、若菜嘉晴氏(中)は熱心に指導する

 6月上旬に熊本県益城町の広安北小学校で行われたプロ野球OBによる野球教室を取材した。4月の熊本地震の影響でまだ体育館には200人の避難者が暮らし、運動場の半分は避難者の駐車場になっている。指導時間も1時間限定だった。

 小学生にとっては、現役時代を知らないOBばかり。どんな反応をするのかは未知数だった。ふたを開けてみると心配無用。「プロ野球選手を初めて見た!」とサインを求めて一人また、一人と輪がふくらんだ。子どもたちは誰なのかはよく、分かっていないはずだ。ただ、見慣れたユニホーム姿に歓喜した。

 参加した若菜嘉晴さん(スポニチ本紙評論家)はこんなことを言っていた。「きょうは俺たちだけどオフは必ず、現役の選手たちが来てくれる。しっかりと練習しとかなきゃダメだぞ。下手なままだった時は“若菜さんに教わった”と言わないでくれよ(笑い)」。私も熊本の片田舎に生まれ、育った。小学生の頃、藤崎台球場で生のプロ野球選手に興奮した。現役選手が来る「その時」には子どもたちの歓喜する姿は、容易に想像できる。

 せっかく熊本まで来たのだからと市内で友人が営む居酒屋を激励にかこつけてはしごした。ライフラインはほぼ復旧したが、客足はまだまだ、戻らない。「これからは心の支援をしてくれたらうれしかね」。友人は言う。例えばサイン一枚、店の壁に飾られているだけで気持ちは前向きになれるという。これまでは支援されてきた被災者は、自ら復興への道を切り開く段階へ移行していく。野球教室の笑顔を見れば「生」のプロ野球はその支えになれると思う。

 プロ野球は143試合を戦う。原則は週休1日だが、日帰りならば訪れることは可能。実際、検討されている。7月15日はヤフオクドームで「マツダオールスターゲーム 2016」の第1戦が開催される。福岡から熊本までは九州新幹線で30分だ。プロ野球界の現地支援にも期待したい。(記者コラム・福浦 健太郎)

続きを表示

2016年6月13日のニュース