本物に敗れた時こそ本物の成長あり 大谷見据えまた鍛錬せよ

[ 2016年6月13日 10:55 ]

<日・神>3回表1死一塁、北條は一直に倒れる(投手・大谷)

交流戦 阪神0-6日本ハム

(6月12日 札幌D)
 【内田雅也の追球】阪神は大谷翔平の前に脱帽、お手上げだった――と書くと、お叱(しか)りを受けるかもしれない。

 何とかするのがプロではないか。攻略法を突き詰めていくのがプロの野球選手であり、プロの野球記者ではないか――という指摘である。

 バットを短く持ち、振幅を小さくしてはじき返す。本塁に近く立ち、内角球を投げづらくする(死球も恐れない)。苦手とされる(どの投手でもそうだが)立ち上がりを攻める。ボール球を見極め、追い込まれた後はファウルで粘り、球数を投げさせる。セーフティーバントなど足を使って揺さぶりをかける。打席を外すなど間(ま)を取り、リズムを乱す。狙い球を絞りコンパクトに一撃で仕留める……。ざっと書き出してみたが、どれも小さく細かい。本当に奏功するとは思えない。

 たとえば、バットを短く持ち、小さな振幅で打ちにいけば、恐らくファウルにしかならない。セーフティーバントや待球選球で疲労を誘おうとしても制球も守備も良い大谷に歓迎されるだけだ。

 相手はプロ野球史上最速163キロを投げる剛球投手だ。監督・金本知憲も打撃コーチ・片岡篤史も打席で見たことがない速さである。145キロ前後のフォークもある。緩いカーブやスライダーで力を抜く術も持つ。

 本物の剛腕には本物の打撃しか通用しない。

 だから、阪神は真っ向勝負を挑んだのだろう。速球に負けまいと鋭く振った。3回1死一塁での北條史也の一直、6回2死二、三塁でのマウロ・ゴメスの右中間ライナー性飛球(右飛)、7回表先頭、福留孝介の一直など、抜けていれば展開が違った快打もあった。

 だが結果は7回3安打8三振の無得点。見事な敗戦である。ただし、それでいいではないか。

 「もしあいつの投げるボールが見えたらバットを振って来い。何も見えなかったら、仕方ない。ベンチへ帰ってこい」

 大リーグ史上、屈指の剛速球で「火の玉投手」と呼ばれたボブ・フェラー(1936―56年・インディアンス)に対した時のセネタース監督バッキー・ハリスの助言(?)である。潔い言葉は力対力を尊ぶ大リーグらしい。何も日本野球を蔑(さげす)んでいるのではない。

 本物に敗れた時こそ本物の成長はある。敗戦から学ぶとはそういうことだ。大谷を見据え、また鍛錬すればいいではないか。 =敬称略=(スポニチ編集委員)

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