法廷で異例の光景…清原被告、親友・佐々木氏と誓いの握手

[ 2016年5月18日 05:36 ]

厳しい表情で報道陣の質問に答える佐々木氏

清原和博被告初公判

(5月17日 東京地裁)
 異例の光景だった。閉廷後。情状証人を務めた佐々木氏は、清原被告の背後を通って退出しようとした。すれ違いざま、2人はどちらからともなく右手を差し出した。固い握手。「ありがとう」。清原被告の口はそうつぶやいたように見えた。かつてのライバルが刑事被告人に転落。それでも佐々木氏の思いは決して変わることはなかった。

 「昔から彼を見ている。親友ですから」。出廷理由を弁護人から問われ、はっきりと答えた。周囲からは「イメージが悪くなる」などと、反対する声が多かったという。それでも「即決で“分かった”と返事をした。何かしてあげたいと思った」と佐々木氏。電話で清原被告と話した際には「ごめんな、ごめんな」と何度も謝られた。この日朝にも連絡を受けた。「(出廷は)当然のこと。気にするな」。それが大魔神の答えだった。

 法廷では、検察によって次々と清原被告の罪状が読み上げられていく。傍聴席の一番奥で聞いていた佐々木氏は目をきつく閉じ、「はあ…」とため息をつくシーンもあった。つらい。悲しい。薬物疑惑の渦中の14年、清原被告を問い詰めた際には「やっていない」と言われた。結果的に、それはうそだった。「ただただショックだった」。それでも証言の最後には裁判官をしっかり見ながら「今後はうそをつかないと信じたい」と訴えた。

 「2回目(再犯)はないと信じている」。今後は親友として清原被告の更生を支えていく。「彼は一生、野球人。同級生と野球教室やボランティア活動をやっていきたい」。佐々木氏は閉廷後に取材に応じ「ああいう(泣いている)顔は見たくない。早く笑顔の清原に戻ってほしいし、野球に携わって、ユニホームを着ている姿を見たい」。清原被告の左胸から背中などにある竜の入れ墨についても「ない方がいい。社会がそう思っているなら、そうした方がいい。落ち着いたら2人きりで話したい」とした。

 公判中、涙を流す清原被告と何度か目が合ったという。「決意が見えた。そういう彼を信じたい。これからが本当に彼の頑張りどころ」と佐々木氏。親友の熱い思いに、清原被告は応えられるだろうか。

 ▽情状証人 起訴事実に争いがない場合、主に弁護側が量刑を軽くすることを求め、公判で被告人に有利な事情を主張してもらう証人。家族や知人ら被告をよく知る人物が被告人の生活状況や性格などを述べるほか、証人が被告人を指導したり支援したりすることを約束することもある。検察側が呼ぶ場合もあり、このケースでは被害者や遺族が厳しい被害感情を訴えて量刑に反映されるように求める。

 ◆佐々木 主浩(ささき・かづひろ)1968年(昭43)2月22日、宮城県生まれの48歳。東北高―東北福祉大を経て90年にドラフト1位で大洋(現DeNA)に入団。2年目に抑えに転向し、5度の最優秀救援投手賞を獲得。98年には45セーブ、防御率0・64で優勝に貢献、MVPに選出された。00年にマリナーズ入り。新人王を獲得し、01、02年にはオールスター出場。日米通算50勝54敗381セーブ。05年に横浜で現役引退。14年に野球殿堂入り。

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