【内田雅也の追球】雨の日の戦い方を実践した阪神 ノイジーがベンチへ叫ぶ姿に一丸の姿勢を見た

[ 2024年4月25日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神5ー3DeNA ( 2024年4月24日    横浜 )

<D・神>9回、ノイジーは勝ち越しの押し出し四球を選び、ベンチに向かって吠える(撮影・椎名 航)
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 土砂降りのなか、大山悠輔の一打が中前に抜けると、阪神ベンチは沸き返った。9回表、無死満塁からの同点打だ。それまでブレーキ役だった4番打者の殊勲打をチームが祝っていた。

 大山はそれまで4打席無安打。5回表1死満塁での一邪飛など、すべて走者を置いた打席で、塁上に計6人の走者を残していた。

 さらにブレーキとなったのは佐藤輝明で、歓喜の逆転勝利でも蚊帳の外だった。4三振に満塁での併殺打。走者8人を残し、打率は1割台に落ちた。

 横浜スタジアムの電光掲示板にはR(得点)、H(安打)、E(失策)に加え、LOB(残塁)まで表示される。勝った阪神だが13もの残塁があったことが示されていた。併殺も2つある。つまり15人の走者が立ち往生したわけだ。

 敗れていれば、拙攻がクローズアップされた一戦だった。雨は試合前から間断なく降り続き、時に激しくなった。1~5回まで毎回、先頭打者を出塁させながら、押し出し四球による1点しか奪えなかった。5回終了時には36分間の中断があった。監督・岡田彰布は「まだ1―0やったからな。あそこでやめたら、相手も怒りよる」と試合続行とみていた。

 「最後(9回表)はつながったけれど、序盤は全然やで。もっと早く、2、3点取っていればな。5回(コールド)で終わっていたかもしれん」

 雨中での試合ではまず先取点が物を言う。降雨コールドの可能性もあるため、まずリードしておきたい。もう一つ。雨の中では試合が荒れる。最後まであきらめないことも肝心である。

 だから、7回裏に好投の伊藤将司が逆転を許した後も岡田は「2点差じゃ何があるかわからん。こんな雨で荒れた時はな」と、再逆転の可能性をみていた。

 2点を追う9回表、雨で足場が緩く、ボールも滑った。得意のツーシームが制球できず、直球ばかりになっていた山崎康晃を攻めたてた。代打・糸原健斗、近本光司、中野拓夢とすべて直球を打っての3連打は見事で無死満塁。森下翔太死球押し出しに、冒頭の大山同点打、シェルドン・ノイジーの押し出し四球で勝ち越したのである。

 四球を選んだ際、ノイジーが自軍ベンチに向け大声で何か叫んでいた。チーム一丸を垣間見る光景だった。 =敬称略=
 (編集委員)

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