【内田雅也の追球】「動くが負け」の采配 岡田監督は試合の流れを読み、想定通りの結末を迎えた

[ 2023年5月28日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神3―2巨人 ( 2023年5月27日    甲子園 )

<神・巨>7回、大城卓に代走増田大を送る原監督(撮影・北條 貴史)
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 阪神監督・岡田彰布の持論に「動くが負け」がある。その言葉をタイトルにした著書(幻冬舎新書)に<戦況が膠着(こうちゃく)すればするほど動きたくなくなる性分>とある。

 投手戦で0―0均衡が続いていたこの日はまさにそんな展開だった。

 <「相手はどうしてくるのか」と熟考しているほうが面白いから、ベンチでも静かに構え「こちらからは動かない」と腹に決めている>。中継画面に映る岡田はベンチに腰をおろし、ゆっくりとアメをなめていた。

 すると相手が動いた。7回表先頭、巨人・大城卓三が安打で出ると代走・増田大輝を送った。無失点の投手をリードしていた捕手を代えるのか。

 結果を先に書くと、直後の併殺打で代走は無為に終わった。その裏、捕手が小林誠司に代わった先発フォスター・グリフィンは2四球と乱れ、近本光司が均衡を破る先制決勝打を放った。

 結果を書いたが、結果論ではない。小林のリードの問題でもない。捕手が代われば、リズムや感覚が狂い、投手に乱れが生じることがある。

 試合後、岡田に問うと「キャッチャーなあ」と少し考えた。「5番を打たせてるバッターやろう。代走もあの場面では走れんよ。なかなかな。オレはバントと思っていた」。そして「結果がああなると裏目ということになるよなあ」と敵将を気遣った。

 むろん、投手への影響も承知のうえで巨人監督・原辰徳は勝負に出たのだろう。前夜もバントエンドランや3番打者に1死からバント、そして無失点の先発投手交代……と原は積極的に仕掛けている。「動」なのだ。

 「静」の岡田も著書で<ただし、試合の流れは読んでおかねばならない><相手の監督が動くよりも前にその先を想定しておかねばならない>。

 相手が動いたのを受け「今が勝負」と動いた。1死一塁から木浪聖也にバントで送らせ、「投手コーチは続投と考えていた」という大竹耕太郎に代打・渡辺諒(四球)を送り、近本、中野拓夢の連続適時打を呼んだ。

 リードが3点あった9回表。岩崎優、湯浅京己は当初から休ませる予定で「1点差なら1人1殺やけど3点あるから(打者)2人まで」と3投手で逃げ切った。「相手の代打の順番もわかっていた」と想定通りで「1点差でも勝てばいい」と余裕があった。=敬称略=(編集委員)

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