ヤーデージブックを持たない 女子ゴルフ元世界ランク1位・宮里藍さんの情報活用術

[ 2021年10月10日 07:30 ]

宮里藍さん
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 【福永稔彦のアンプレアブル】女子ゴルフの元世界ランキング1位で17年に現役を引退した宮里藍さんが立ち上げたジュニア大会「宮里藍インビテーショナル Supported by SUNTORY」が9月18、19日に佐賀・若木GCで開催された。

 今冬に出産を控え、お腹の膨らみが目立ち始めた宮里さんはコースで選手たちのプレーを見守り、ラウンド後に行われた「ビジョン54」のレッスン会で講師を務めた。

 「ビジョン54」は、宮里さんが現役時代に学んだゴルフに特化したメンタルメソッド。この理論をもとにプレー中のメンタルのコントロール方法などを伝授した。

 レッスン会では質疑応答の時間も設けられたが、ここで意外な事実が明らかになった。「ヤーデージブックに何を書いていますか」という質問に宮里さんはこう答えた。

 「私は感覚でプレーするタイプなので情報は最低限しか入れませんでした。入れてはいけないラフとか、右からの方が攻めやすいとか、そういう情報以外は書き込んでも使わないことが多かった。自分に必要な情報だけ書き込んでいました」とヤーデージブックの使い方を説明した。

 その後、こう付け加えたのだ。「これは参考にしなくていいと思いますが、プロになって2年目でヤーデージブックを持つのをやめました」。選手たちからは驚きの声が上がった。

 近年、日本のゴルフ界ではヤーデージブックの活用法が注目されている。火付け役はナショナルチームのガレス・ジョーンズ・ヘッドコーチだ。15年に就任したジョーンズ氏は、選手たちに準備の重要性を説き、練習ラウンドで情報収集を徹底するよう教え込んでいる。

 完全に真っ直ぐなパットが残るライン「ゼロライン」、プラン通りにボールを打っていけるエリア「インポジション」などの用語を使い、ヤーデージブックに細かくメモを取るように指導している。

 ジョーンズ氏の教え子であるナショナルチーム出身の畑岡奈紗らは、プロ転向後もヤーデージブックに細かく情報を書き込み、スコアメークに役立てている。ヤーデージブックを持たずにプレーすることは、こうした傾向とは“真逆”な行為にも見える。

 宮里さんもプロになった当初はグリーンの傾斜など詳細な情報を書き込んでいた。しかし、ヤーデージブックの情報と自身の感覚にギャップを感じるようになった。

 「右から左に切れると書いてあるのに、あまり切れそうに見えなかったりして、迷いにつながっていた。自分のゴルフにマイナスになっていると感じた。1年を通してほとんど使わない印象だったので、潔く持たないで自分のフィーリングを大事にしようと思った」

 決断した後は、引退するまで一度もヤーデージブックを持ったことがなかった。

 この話を聞いて、サッカー日本代表で司令塔を務めた中田英寿さんを思い出した。試合前に対戦相手の情報をどれくらい頭に入れているのか聞いた時、中田さんも同じような趣旨の回答をしていた。

 中田さんは、相手DFの身長、体重や100メートル走のタイムなどのデータをそれほど重視していなかったようだ。そうした数値よりも、実際にピッチ上で競り合った時に自分が感じる高さや速さの方がより重要なのだと説明してくれた。

 宮里さんが強調するように一般のアスリートには参考にならないのかもしれない。それでも、ゴルフとサッカーで一時代を築いた2人のレジェンドが、データよりもフィーリングを大切にする点で共通していたことは非常に興味深い。(スポーツ部専門委員)

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