【ラグビー日本代表2021秋の陣《7》】心も体も充実期 田村優が信じる肌感覚

[ 2021年10月10日 14:25 ]

田村優(AP)
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 人間、あるいは他の生物にも言えるかも知れないが、ストレスがたまると肌が荒れる。メンタルヘルスとお肌の調子は表裏一体。ならば「高校生でラグビーを始めた時から、その感覚でやっていた。パスかキックかランかの選択肢があるので、それを常にどのタイミングで使うか。同じ状況でも時間、場所、点差で変わるので、そこで肌感覚を信じる」と語るSO田村優(32=横浜キヤノンイーグルス)のパフォーマンスも、精神状態に左右されると言えるかも知れない。

 その観点で言えば、6月の全英・アイルランド代表ライオンズ戦、7月のアイルランド戦は、極めて充実したメンタルで臨めたのだろう。特にアイルランド戦は随所で好プレーを見せた。前半終了間際には左エッジへキックパスを通してトライの起点に。後半始まってすぐには意表を突くランで、逆転トライを演出した。「勝てなかったので結果が全て。日本は世界レベルでも引けを取らないが、競った展開で落とした。力は付いているが、勝ちきれないのは課題」と本人は全く満足していないが、日本の司令塔に田村優ありを見せた2年ぶりのキャンペーンだった。

 19年W杯直後は、決して代表活動を続けることに前向きではなかった。明確な態度こそ表明しなかったが、「代表は生半可な状態で行くところではない。100%の状態で、向こうから求められないと行けない」と話したことがある。そんな田村が再び意欲をかき立てるきっかけになったのは、他でもないコロナ禍による活動停止。「コロナで大変な人がいる中であれ(発言をはばかられる)だけど」と前置きしつつも、初キャップを獲得した12年からメンタルを擦り減らし続けてきた男にとっては、強制休養期間はプラスに働いた。

 「これまでラグビーをやり過ぎなところもあったので一度、普通の生活を送る必要があった。バランスを取り戻したというか、ラグビーをやることにストレスがなくなったというか、そういうメンタルになれたのかなと思う」

 23年W杯まで残り2年を切った中、今回の宮崎合宿に招集されたSOは田村と松田力也の2人だけ。男子15人制強化責任者の藤井雄一郎ディレクターは、オプションを増やすために他ポジションの選手に10番をカバーさせる方針を示しているが、現状で松田も含めて並び立てる選手は不在だ。時にドライなプレーが悪目立ちし、若手の待望論が沸き上がったことはこれまでに何度もあるが、少なくとも田村本人は気に留める素振りを外には見せない。藤井ディレクターの発言にも、「2人ともケガした時に大変。(他の選手もSOを)できる越したことはないと思う」と歓迎。32歳という年齢にも「本当の年齢と体の年齢は違う感じがしている。フィットネスの状態も今までで一番高い。今の方が元気ですよ」とどこ吹く風だ。

 7月のアイルランド戦前の1週間、密にコミュニケーションを取って試合への準備をしたSH斎藤直人は言う。「より抜け目のない準備をしていた印象があった。自分も準備をしてきたつもりだったが、代表クラスはここまでやるのか、と」。かのボーデン・バレットとも1シーズンを過ごしたホープに、カルチャーショックを与えるほどの凄みを見せた田村。天才も一日にして成らず。この秋はいずれ劣らぬ強豪に勝ちきるため、しっかりと肌感覚を研ぎ澄ます。

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