【上水研一朗の目】羽賀、劣勢時の“我慢”を覚えて円熟味増した

[ 2020年12月27日 05:30 ]

柔道全日本選手権 ( 2020年12月26日    東京・講道館 )

全日本柔道選手権大会決勝で太田(手前)に内股で一本勝ちした羽賀(代表撮影)
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 勝った方が優勝に近づくと考えていた3回戦で、羽賀が影浦相手に披露した試合に感服させられた。影浦が得意とする担ぎ技に「絶対に入れない間合い」を熟知している羽賀は、最後までミリ単位で間合いを保った。もちろん、自身の技の威力も減じるのだが「柔道をしよう」とした東海大の後輩に対し「勝負に徹して」結果を手にした。決勝の太田戦も同様だ。相手が組み手に妥協した一瞬を見逃さなかったのは、序盤の相手ペースを我慢したからだ。

 切れ味鋭い技を持つ選手は、試合中に相手を投げることができないと、気持ちが切れてしまう傾向がある。羽賀も同様だったが「我慢」を覚えた。学生時代から相手の分析力と作戦遂行能力が光っていたが、この能力が存分に生きるようになり、円熟味が増した。

 一方、太田は素直で優しい性格が災いし、結果が出ないことも多かったが、これで自信をつかむだろう。組み手の圧力にたけており、担ぎ技を繰り出す器用さもあり、24年パリ五輪の代表争いに加わってくるだろう。 (東海大体育学部武道学科教授、男子柔道部監督)

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2020年12月27日のニュース