学生アメフト界に新たなうねりだ 京都府立大の谷コーチ、27日の阪南大戦でプレーコールデビュー!

[ 2020年12月27日 05:30 ]

27日の阪南大戦で初めてプレーコールを出す京都府立大・谷桃衣オフェンスアシスタントコーチ
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 選手の一挙手一投足に注ぐ視線が熱い。阪南大戦を翌日に控えた京都府立大グラウンド。谷桃衣オフェンスアシスタントコーチは、スクリメージラインの後ろに立ち、真剣な眼差しで最終調整を見届けた。

 「1戦目に比べて、選手はだいぶ成長している。プレーの数も増えているし、自分たちの力が出せれば、明日は勝てると思う」

 力強い口調には、揺るがぬ信頼感がある。関西学生アメフトリーグも直撃したコロナ禍。1部は秋季公式戦でトーナメント形式が導入され、2部から4部は試合できる環境の整ったチームによる「交流戦」に姿を変えた。もちろん、競技に懸ける情熱は、カテゴリーを選ばない。4部所属の京都府立大も、練習時間や場所が大幅に制限される中、研鑽を積んできた。今季初戦(10月31日)は佛教大に0―13。初勝利を目指す阪南大戦は、20年シーズンのラストゲームになる。4年生の花道を飾るその一戦で、谷コーチは初めてプレーコールを出す。

 「アメフトに対する彼女の理解度は、選手よりも深い部分がある。こちらとしては安心して任せるし、テンパらず、落ち着いてやってくれたら問題ない」

 大役を与えた梅村建人監督は静かに胸の内を明かした。女性指導者といえば、国内初の女性監督として注目を集めた関西外大(4部)の沢木由衣監督が先駆者。ただ、得点差、ボールポジション、ダウン数、相手ディフェンスとの力関係、風などの外的条件を瞬時に把握し、最終決定を下すプレーコールは、競技者以上に戦術に精通していなければ務まらない。連盟関係者は「大学レベルの試合で、女性がプレーコールを出していた記憶はない」としている。

 「もし、今年自分が4年生だったら、きっと心が折れていたと思う。大変な状況の中でも頑張ってきた選手のためにも勝たせてあげたい」

 短い言葉に決意をこめた谷コーチは、京都府立大OG。2015年4月に入学し、全くアメフトと関わりがなかったのに部の門を叩いた。「チームの人が面白かったので…」。与えられた役割はアナライジングスタッフ(AS)。強化のために、初めて立ち上げられた部門だった。競技のイロハを知らない初心者にとって、相手をスカウティングし、統計を出す仕事は苦行に近い。「あの当時は、ほぼ毎晩徹夜していました」。とはいえ、プレーヤーとスタッフが自分の長所を持ち寄って、勝利を目指すアメフトの魅力に気づくまでに時間はそう必要ない。卒業した後もスタッフとしてチームに関わり、コーチとしての肩書きも加わった。

 「オフェンスで一番好きなポジションはOL(オフェンスライン)。プレーの時も最初にOLを見てしまいます」

 “OL魂”を口にする谷コーチの“1勝”に対するこだわりは強い。大学最終学年だった2年前、2部で全敗して3部降格。昨季は3部で一つも勝てず、4部に落ちた。15人の部員で挑む27日のゲーム。自身の「デビュー戦」に臨む心構えを口にした。

 「私はプレーの経験がないので、その分“攻めた”コールができる。いい意味で攻めの気持ちを忘れずにやっていきたい」

 覚悟のプレーコールが、学生アメフト界に一つの潮流を作る。

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