羽生、4回転半“初披露” 史上最大逆転Vへ 首位チェンに練習からプレッシャー

[ 2019年12月7日 05:30 ]

フィギュアスケートGPファイナル ( イタリア・トリノ )

演技する羽生(撮影・長久保 豊)
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 男子ショートプログラム(SP)で14年ソチ、18年平昌五輪連覇の羽生結弦(25=ANA)は連続ジャンプのミスで97・43点の2位発進となった。7日のフリーは首位ネーサン・チェン(20=米国)との12・95点差を追いかける。6日はフリーに向けた公式練習に参加し、公の場で4回転半ジャンプ(クワッドアクセル)に初挑戦。チェンに心理戦を仕掛け“史上最大”の逆転劇を完遂する。

 これこそが、羽生だ。2位発進となったSPから一夜明け、壮大な挑戦に取りかかった。自らが現役続行の最大のモチベーションにしている前人未到のクワッドアクセル。基礎点12・50点と現時点で最高難度の超大技を、公の場で初披露してみせた。

 フリー「Origin」の曲かけ練習後、動いた。アクセルジャンプの踏み切り動作を確認。その後、クワッドアクセルに3度挑んだ。1度目を失敗すると、ケガを心配する会場のファンから悲鳴も起きた。2度目、3度目も回転が足りずに転倒。最後は氷上に倒れ込んだ。成功こそできなかったが、最後はそのチャレンジ精神に拍手が湧き起こった。

 かつて「クワッドアクセルをやるために生きている」と形容した。練習後、羽生は「ただ練習していただけです」とひょうひょうと語った。きょう7日のフリーで跳ぶ可能性はゼロ。それでも、完成間近のクワッドアクセルに挑むことで、チェンに無言の圧力をかけた。

 SPでのふがいなさが、王者を突き動かした。コーチ不在で臨んだSPは、終盤の4回転トーループで大きくバランスを崩し、いつもなら美しい軌道を描く連続トーループが単発に終わった。チェンとは実に12・95点差。それでもファイティングポーズは崩さない。「悔しいと言っていても、しようがない。この1分1秒をどうやって過ごすか」。怒濤(どとう)のジャンプ練習は、自身を奮い立たせる意味もあった。

 最強ライバルこそが、自らの最高のパフォーマンスを引き出すことは分かっている。SP後の会見、チェンを横目に羽生は言った。「僕はやっぱり強い相手と戦うのが凄い好き。(チェンは)いつもスケートをやっている意味を与えてくれる存在」。過去、チェンとの個人戦での直接対決で連敗はない。そのプライドがにじみ出た。

 フリーは誕生日の7日に行われる。25歳初日から新伝説を生み出すことが、ファイナル5度目の頂点への絶対条件だ。羽生にとって最大の逆転劇は17年世界選手権。フェルナンデスとのSP10・66点差をフリーでまくった。羽生とチェン。2人の頂上対決は、まだ終わっていない。

 ▽羽生の逆転劇 17年世界選手権は98.39点のSP5位発進で、首位のフェルナンデスに10.66点差をつけられながら、フリー1位の223.20点と逆襲して金メダルを獲得した。この時が羽生の中で最大の逆転劇。GPファイナルでは現在、8年連続SP1位が優勝しており、08年にSPで首位の小塚に5.64点差をつけられたアボットの逆転優勝が最大点差となっている。

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