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魚を求めて何千里?気づけば足がパンパンに

[ 2019年3月22日 06:52 ]

釣りをおぼえなさい(イラスト)
Photo By スポニチ

 【幸せになりたかったら釣りをおぼえなさい】「マジンガーZ」、「釣りバカ大将」などを手がけたことで知られるマンガ家、桜多吾作が釣り人生を振り返る連載の第3弾。釣りに夢中になりすぎた揚げ句の…。(イラスト&文 桜多 吾作)

 27歳の頃、当時あった人気雑誌「冒険王」などに連載を持ち、漫画家としてなんとか食っていけるようになった。午後1時ごろ、起き出して翌日明け方の朝5時まで。昼夜逆転の生活で、たまにアシスタントたちを連れて新宿で飲み歩いていた。まだ若かったからできたが、座り仕事で、生活は不健康きわまりない。

 そんな折、時間がぽかっと空いた日があった。徹夜明けに一番電車に乗って、千葉県館山市の平砂浦へ向かった。竿とバッカンに、投げ釣り用のジェット天秤(てんびん)やリール、仕掛けなどを入れた軽装だ。靴は軽登山用のキャラバンシューズ。紺色の靴で、50歳代以上の人は覚えているのではないか。

 たまごウキを付けて、バケ(サビキ)仕掛けで狙ったのはフッコ。釣れればもうけもの。運動不足解消のつもりだったから、気楽なものだ。だが魚からの当たりは何もない。釣れなければ、さすがにむなしくなってくる。

 そのとき波口のパイプラインの周辺に何匹かのフッコが群れているのが見えた。それもデカい。が然、やる気が出てきた。キャストしてリーリングを繰り返しているうちに待望の当たり。強烈な引きで、慎重なやりとりの末に上がってきたのは、60センチぐらいのフッコだった。

 釣れたのはいいが、魚を入れるクーラーを持ってきていない。仕方がないので血抜きをした後、糸をつけたまま、波口から10メートルぐらいのところで海水につけたままにした。その場所には目印に枝や棒を刺しておいた。

 まだ釣れそうだ。ラン&ガンしながら平砂浦を夢中で釣り歩いた。

 帰りに魚を回収しようと思って戻ったが、魚は見当たらなかった。

 釣りに行ったのに魚のお土産がないことを妻は不思議に思っていたのだと思う。

 驚いたのは足が腫れ上がり、キャラバンシューズを脱ぐのに一苦労したこと。釣りに夢中になった揚げ句、いったいどのぐらいの距離を歩いたのだろうか?

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