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マアジ33センチで至福な時間 人生で初めて海上で富士山を見ながら…

[ 2024年1月31日 04:30 ]

開始から約1時間40分後に33センチのマアジを釣り上げた
Photo By スポニチ

 【還暦からの釣り習い】還暦を機に始めた釣り。昨年の初回と2回目はマアジをLT船で狙ったが、今回はおいしそうな良型マアジを求めてビシ船に乗り込むことにした。お邪魔したのは神奈川・茅ケ崎の沖右衛門丸。さあ、沖へ――。(牧 元一)


 沖に向かう途中、遠くに富士山が見えた。朝焼けに浮かぶその姿は幻想的で美しい。海上で富士を見るのは60年の人生で初めて。これだけでも釣りを始めた価値がある。

 風は弱く海上は穏やか。初回に苦しめられた船酔いの心配もなさそうだ。開始からおよそ1時間半後、ズシリと手応えを感じた。最大で14センチだった初回、最大で23センチだった2回目とは明らかに違う重量感。良型への期待が膨らむ。

 仕掛けとコマセを投げ入れ狙っているのは水深約100メートル。水深20メートル程度だった過去2回とは深さがまるで違う。手巻きリールでは作業が困難なので、今回は初めて電動リールを手にしていた。

 小生の釣りの師匠・柿ノ木早苗さん(銀座のバー「Cavallo」経営者)からは事前にこんなアドバイスをもらっていた。「マアジは魚の中で特に口が軟らかく切れやすいので、釣り上げる時の電動のスピードを事前に船長さんに確認しておくと良いです」

 糸を巻き上げる速度は遅め。船に乗り込んだ直後に木村敏夫船長に教えてもらった数値を順守した。少しじれったいが、ここは我慢。待てば海路の日和ありだ。電動リールのメーターと海面を交互に眺めているうちについにその時がやって来た。姿を現した魚。これは大きい。満足感いっぱいにたぐり寄せ、左手でグッと握りしめた。

 「それはマアジじゃない。サバだ」。船長の冷静な声が操舵(そうだ)室から聞こえた。狙いとは違う。だが、無念さではなく楽しさが込み上げてきた。考えてみれば、海でマアジ以外の魚を釣ったのは初めて。マアジ用の仕掛けでサバも釣れる…。愉快だ。

 それからおよそ10分後、再びズシリと手応えを感じた。先ほどと同じようにゆっくり糸を巻き上げると、今度はマアジらしき魚が掛かっていた。「これはマアジですよね?」と小生。「そう、マアジだ」と船長。「30センチを超えてますよね?」と小生。「うん。超えてる」と船長。小生が笑うと船長は満面の笑みを返してくれた。陸上では得難い幸福な時間。下船後に計測すると、そのマアジは33センチだった。

 結果的にこの日はサバ(35センチ)を含め計5匹しか釣れなかった。幸先は良かったのだが、途中から風が強くなったせいか乗船者全員が苦戦。労せず釣れる時もあればいくら頑張っても釣れない時もある…。それもまた釣りの面白さだろう。

 何より今回は至福の時間を得られたことが大きい。当たりが少なくなった時、周りの景色に見入った。目の前にカモメが飛んでいた。別の釣り船でも人々が楽しんでいた。なんとも平和な光景だ。仕事のことは考えない。魚のことすら考えない。柔らかい潮風の中でただ自分が豊かに生きていることを実感した。

 このような旅情も、釣りの魅力のひとつだと学んだ。


 ≪サバ・アジを計6品に≫ 釣った魚は行きつけの浅草のジャズ・バー「JAZOO」経営者・小林由果さんに全て渡した。ジャズシンガーとしても活動する由果さんは料理もとても上手だ。サバの味噌煮、サバの塩焼き、しめサバ、アジのたたき、アジの骨の唐揚げ、アジ南蛮の計6品が完成。由果さんはサバ味噌煮について「身がふわふわで最高。ご飯を2杯いただいた」と満足げ。アジ南蛮は店のお通しとして活用された。

 ▼釣況 東日本釣宿連合会所属、茅ケ崎・沖右衛門丸=(電)0467(82)3315。出船時間は午前6時45分、乗合料金は1万1000円。

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