「どうする家康」溝端淳平“ヒール氏真”は逆算 反響に喜び「いい意味で裏切れた」念願の初大河に武者震い

[ 2023年3月25日 13:50 ]

「どうする家康」今川氏真役・溝端淳平インタビュー(上)

大河ドラマ「どうする家康」第4回。 裏切り者の松平元康を許さない今川氏真(溝端淳平)(C)NHK
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 嵐の松本潤(39)が主演を務めるNHK大河ドラマ「どうする家康」(日曜後8・00)は26日、第12回「氏真」が放送される。人名のみの副題は今作初。俳優・溝端淳平(33)演じる戦国武将・今川氏真の回となる。時代劇には多数出演済みだが、意外や大河初出演。ヒールぶりがSNS上で反響を呼ぶ溝端に、撮影の舞台裏を聞いた。

 <※以下、ネタバレ有>

 「リーガル・ハイ」「コンフィデンスマンJP」シリーズなどのヒット作を生み続ける古沢良太氏がオリジナル脚本を手掛ける大河ドラマ62作目。弱小国・三河の主は、いかにして戦国の世を生き抜き、天下統一を成し遂げたのか。江戸幕府初代将軍を単独主役にした大河は1983年「徳川家康」以来、実に40年ぶり。令和版にアップデートした新たな家康像を描く。古沢氏は大河脚本初挑戦。松本は大河初主演となる。

 今川氏真は駿河国大名・今川義元(野村萬斎)の嫡男。坊ちゃん育ちのためプライドも高い御曹司だが、その実、偉大な父を持つがゆえの劣等感に苦しみ、義元が目をかけた家康にコンプレックスを抱いている。

 第4回「清須でどうする!」(1月29日)、織田信長(岡田准一)と盟約を結んだ家康に氏真は激怒。夜伽(よとぎ)を強いた瀬名が家康の木彫りの兎を握っていると、瀬名の血の文と壊れた兎を家康に送りつけた。「今川は今この時より、再興の道を行く!裏切った者たちに死をもって償わせよ!」――。目をむく溝端の熱演に、SNS上には「氏真、ゲスの極み」「狂気演技、流石」「視聴者のヘイトをたっぷりと集めなさった」などの声が続出。“ブラック氏真”“闇落ち氏真”と話題を集めた。

 一方、第6回「続・瀬名奪還作戦」(2月12日)は人質交換の際、氏真が家臣に銃撃の合図をしようとした時、家康の長男が「父上、父上!」。氏真は対岸の元康とにらみ合い、引き揚げた。城に戻ると、氏真も「父上…」。溝端が“2代目”の重圧や苦悩をまざまざと表現し、SNS上には「氏真を嫌いになれない」「最後の氏真くんの表情が心配すぎて→『#氏真を救いたい』で応援したくなった」などと同情や共感の声も上がった。

 好演が記憶に新しい2021年1月期のTBS日曜劇場「天国と地獄~サイコな2人~」の刑事・八巻役のように“いい人”のイメージもある溝端。「氏真役は新境地?」と尋ねると「自分としては、そういう感じは全くないですね。もちろん八巻のような明るくて真っすぐで、ちょっとドジみたいな役のイメージもあると思うんですけど、自分としてはこういう役も好きです。演劇の方で結構、演じさせていただいているんです」と平常運転。それでも「僕自身が役のような人物だと思われるのは、役者冥利に尽きます。だからこそ、今回の氏真の反響も、いい意味で視聴者の皆さんを裏切ることができたのかなと、とてもうれしく思っています」と喜んだ。

 舞台出演も豊富だが、佐々木小次郎役を演じた「ムサシ」(13~14年、18年、21年)、女役に初挑戦した彩の国シェイクスピア・シリーズ第31弾「ヴェローナの二紳士」(15年)は日本が世界に誇る蜷川幸雄氏の演出。20代のうちから研鑽を積んだが、念願の初大河に“蜷川演劇”との共通点を見い出した。

 「古沢さんの素晴らしい台本があって、スタッフの皆さんもセットに小物から何から揃えて、100%の舞台を用意してくださる。監督はそうはおっしゃらないですけど、『溝端、どうやってくれるんだ?』と問われているようでした。これは何かに似てるなと思ったら、蜷川演劇なんですよね。僕は蜷川演劇から『何を使ってもいい、何をやってもいい。芝居なんて、やっちゃいけないことなんてないんだ』ということを学んだんですけど、今回の現場も、とことん役者の感情を振り絞って、絞るだけ絞って、最後に出るところまで全部出す、という芝居に毎回、挑ませていただくことができました」

 第3回「三河平定戦」(1月22日)、家康が織田に付き、今川を裏切った一報が届くシーン。オンエア上は「(松平様、離反にございます)嘘じゃ…。(文を読み)元康…」とつぶやくまでだったが、その後、実は暴れ回っていた。「そういうふうに、芝居への自由度がありつつ、かつストイックに取り組める環境をつくっていただけたのが、本当にありがたかったですね」と感謝した。

 「大河ドラマはある種、非日常だと思うんです。戦国時代の人物をリアルに演じるといっても、戦が日常にある感覚は現代の日本人には理解しかたいじゃないですか。それは蜷川演劇のシェークスピア作品やギリシア悲劇に近いものがあって。今の自分の日常生活には置き換えられない壮大なスケールの世界観の中で演じるのは相当な熱量や集中力が必要で、そういう場所で鍛えていただいた経験が今回、活かせたのかなと思います。20代の頃、蜷川さんや(蜷川作品の常連)吉田鋼太郎さんに食らいついてよかったなと感じています」。修行の日々が結実した。

 明日(3月26日)夜の第12回は「氏真」。「望んでいなくても天に選ばれ、出世していく家康と、望んでいても時代に見放され、落ちぶれていく氏真は、まさに対照的」。義元の下、兄弟のように育ったものの、袂を分かった2人に、ついに決着がつく。

 第1章完結とも呼べるヤマ場回。「オファーを受けた時には第12回までの台本ができていました。なので、ヒールな氏真、苦しみまくる氏真、と逆算しながら創り上げることができたと思います」と手応え。ここまでの出番は節目節目だったが、強烈な印象を焼きつけた。「短いシーンでも、もう最大出力でエネルギーを詰め込んでいました。野球で例えると全力投球、全部150キロ超えのストレートみたいな(笑)。いつも武者震いしながら演じていました」。その集大成がいよいよ訪れる。

 =インタビュー(中)に続く=

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