「カムカムエヴリバディ」るいの微笑 ひなたの「旗本退屈男みたいで、かっこええな」

[ 2022年2月4日 08:15 ]

4日放送の連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第67回で、ひなた(新津ちせ)を抱きしめる、るい(深津絵里)(C)NHK
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 【牧 元一の孤人焦点】4日放送のNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第67回で、ヒロインのるい(深津絵里)が娘のひなた(新津ちせ)から、額の傷について「おかあちゃんのこれ、旗本退屈男みたいで、かっこええな」と言われる場面があった。

 旗本退屈男とは、小説家の佐々木味津三さんの時代小説「旗本退屈男」(1929年~)の主人公・早乙女主水之介のことで、主水之介は額に三日月形の傷を負っている。

 この作品は1930年に俳優・市川右太衛門さん主演で初めて映画化。戦後は俳優・中村竹弥さん、俳優・高橋英樹(77)の主演で、それぞれテレビ時代劇化されたが、「カムカムエヴリバディ」の現在の時代設定(1975年)の少し前に当たる1973年10月から74年3月まで、市川右太衛門さん主演版が放送されていた。

 ひなたは小学4年生で「時代劇が大好きな女の子」という設定。この日の放送までに、お茶の間のテレビで時代劇の殺陣を見ながら玩具の刀で遊ぶ姿などが描かれており、過去に「旗本退屈男」も見て、額に傷を持つ主人公に、純粋にあこがれていたことがうかがえる。

 演出の二見大輔氏は「子供が深い意味で言ったわけではないのに親に響くことがある。あのシーンは今週の放送のピークと位置づけていて、そこに向かってどう昇華させようか、いろいろと考えた」と話す。

 るいの額の傷は幼い頃、母・安子(上白石萌音)との自転車移動中の事故で負ったもの。安子と離れて暮らさなければならなくなった要因として、その傷があり、成長してからは仕事や恋愛の際の負い目になっていた。

 るいが、ひなたから「おかあちゃんのこれ、旗本退屈男みたいで、かっこええな」と言われた時、その顔に浮かんだのは、微笑だった。

 二見氏は「今週の放送で見ていただきたかったのは、るいと錠一郎(オダギリジョー)が娘のひなたとともにどんな日常を築いているのかということ。それは温かくいとおしい世界で、このドラマの第1週、るいの母の安子がまだ子供だった頃の世界観に通じる。あのシーンは、見ている人に、ほほえましく感じていただけるように表現したかった」と語る。

 るいの微笑からは幸福感がうかがえた。額の傷は、かつて、るいを苦しめるだけのものだったが、錠一郎と愛し合い、ひなたを産み、育てていく中で、別の感情が生まれ始めていることがうかがえる。もしかすると、ずっと避け続けてきた母・安子への新たな思いも芽生えるかもしれない…。そんな前向きな印象を受ける場面となった。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴30年以上。現在は主にテレビやラジオを担当。

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2022年2月4日のニュース