広島・佐々岡監督―本紙評論家・金本知憲氏と特別対談 V奪回“マル秘”戦力構想明かした

[ 2020年6月2日 05:30 ]

シーズン開幕へ、金本知憲氏(上)と対談を行った佐々岡監督(撮影・北條 貴史)
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 プロ野球のセ、パ両リーグは1日、新型コロナウイルスの感染拡大で延期され、19日に開幕する公式戦の一部日程を発表。ナイター6試合でスタートする。DeNA3連戦(横浜)で一歩を踏み出す広島・佐々岡真司新監督(52)を、前阪神監督で親交の深い金本知憲氏(52=本紙評論家)が直撃。指揮官は「マル秘戦力構想」を披露し、投打一体でV奪回を果たす意気込みを示した。対談は緊急事態宣言発令前の3月に収録し、解禁後に取材を加えて編集した。

(構成・江尾 卓也)

 金本氏(以下金本) 開幕が6月19日にようやく決まりました。当初の3月20日から3カ月も延期。情勢を考えれば仕方のないことですが、練習にも制限が設けられ、選手は調整が難しかったと思います。

 佐々岡監督(以下佐々岡) 経験したことのない大変な事態だからね。練習時間や接触機会を制限して感染予防を徹底したので、選手は確かに調整が難しかったと思う。ボクらも正直難しかった。

 金本 選手にはどんな言葉を掛けたんですか?

 佐々岡 開幕日が決まらないことには、モチベーションもなかなか上がらないと思うけど、“必ず開幕するんだから、できることをしっかりやろう”と。それしかないよね。

 ――予断を許さない情勢ではありますが、金本さんは今季のカープをどう見ていますか?

 金本 パッと思い浮かぶのは、野手に楽しみな選手がたくさんいるな…と。野手は場数や経験を積んでナンボというところがあるし、2~3年後が楽しみだな…という布陣。その分、投手が…ね。どうですか?

 佐々岡 うーん…投手はちょっと…ね。

 金本 特に後ろが不安でしょ?

 佐々岡 まぁ後ろもだし、先発も…ね。秋の楽しみがキャンプで期待から不安に変わった。思うほど若手が伸びなかったから。

 金本 2軍(投手コーチ)時代にちゃんと見ていなかったんじゃないですか?(笑)

 佐々岡 4年見たよね。メドが立った選手もいるし(苦笑)

 金本 僕にも経験がある。秋に“このボールを投げてくれたら楽しみ。ひと冬越えてどこまで伸びるかな”と期待した選手が、春になったら“アレ?”みたいな…ね。

 佐々岡 全くその通りだね。入団2、3年目の投手がひと冬越えた春に“アレ?”という感じだった。期待していたんだけどね。

 金本 そこが若い投手のカベでしょうね。ブルペンでは良かったのに、走者が出てクイックになった途端にブルペンの球が投げられないとか…ね。

 ――金本さんは佐々岡監督と旧知の仲。佐々岡野球はどんな感じになると思いますか?

 金本 野手出身の監督だって投手陣から固めていきたいものだし、ましてや投手出身だからね。ただ、そうするには投手陣に一定程度計算できる人材が集まってこないと。

 佐々岡 先発の6枚と中継ぎの7、8枚はある程度考えているけどね。リリーフの最後に出る投手が誰なのか…というぐらいで。
 金本 大瀬良、ジョンソンは大きい。

 佐々岡 うん。3連覇の時の中崎が居ないんだけど、そこのポジションが決まれば。

 ――シーズン中は胃が痛くなりますか? 飲酒できなくなるとか。

 金本 それは全くないね。僕の場合はチームをつくり変えよう…というのが先にあったから、勝敗のプレッシャーはそこまでなかった。佐々岡さんも大丈夫じゃないかな。

 佐々岡 大丈夫だと思うやろ? 大丈夫だと思うよ(笑)

 金本金 本 シーズンが待ち遠しいですね。

 佐々岡 当面は無観客だけど、笑顔で初陣を迎え、一日も早くファンの人たちと球場で再会したいね。

 金本 投手は不安ということでしたが、ルーキーの森下は良さそう。僕も映像を見ましたけど、真っすぐはスピンの利いたいいボールを投げますね。

 佐々岡 投げ方がきれいだから。上から叩きつけるというか、フォームが安定している分、バラつきがない。150キロ出るし、球の力や強さもある。

 金本 球種は?

 佐々岡 スピンの利いた真っすぐ。それにカーブ、チェンジアップ、カットボール。ドラフト1位で獲った選手だし、当然ながら期待しているけどね。

 金本 クイックはどうなんですか?

 佐々岡 これはもう何でもできる。野球センスがある。

 金 本 投内連係も問題なし?

 佐々岡 バッチリ。

 金本 まるで佐々岡監督のルーキーの時みたいですね。守ってよし、投げてよし。

 佐々岡 カネは、俺の1年目を知らんやないか(笑)

 金本 (笑)僕も監督をやって初めてわかりましたよ。1軍選手は(投内連係が)できて当然というイメージでしょ。でも、できない選手が多くてね。あれは苦労しました。名前は言えないけど、できる方が少ない。

 佐々岡 守備ができないと1軍ではなかなか(難しい)ね。ここという時にミスが出ると、戦力としては計算しづらい。その点、森下や床田は器用。

 金本 なるほど。

 佐々岡 中でも森下は打撃が好きだし、守備や走ることにも野球センスを感じる。マエケン(前田健太=ツインズ)みたい。

 金本 背番号18はいい選手が多いね。

 佐々岡 マエケンの移籍後、誰も18番を付けていなかったので、ドラフト指名できた時にすぐに(松田元)オーナーの所に行ってOKをもらった。18番が似合うような雰囲気を出してきたよね。

 金本 遠藤という投手はどうですか?

 佐々岡 遠藤を秋に見た時、これはローテーションに…と思ったんだけどね。

 金本 昨季はリリーフでしたよね?

 佐々岡 うん。ロングもやった。今年は先発の役割を期待しながら見ていたら、春先にアレッと。でも、だいぶ良くなって楽しみな方に入ってきた。

 金本 岡田にも期待していました。

 佐々岡 だから、リリーフに持っていったんだけどね。ブルペンではバラつきも少なくて、ホレボレする球を投げる。後ろはメンタルが重要になるので、いきなり8、9回は難しいとしても、最初をうまく抑えたら乗っていけるかな…と。今は2軍で調整させているけど、時間を有効に使ってほしいよね。

 金本 (勝ち展開の)9回がまだ…と言うことでしたが、外国人はどうですか?

 佐々岡 去年経験しているフランスアが春はあまり良くなくて、新外国人のDJもピリッとしなかった。安定感なら同じ新外国人のスコットなんだけど、悩ましいところよ。

 金本 先発が抑えて野手が援護しても、7~9回に逆転されると、もうどうしようもないですからね。

 佐々岡 それが痛いんよ。去年は多々あった。そこを何とか…というところだけど、まだ…ね。外国人頼みになるだろうし。

 ――金本さんが阪神の監督を務めた時は、後ろの形をつくることを重視されましたね。

 金本 終盤の逆転負けはあまり無かったですね。1年目にマテオ、ドリス。2年目に桑原が出てきて、すごく助かった。全然打てないチームでね。3割打者はゼロ、80打点を挙げた打者もゼロ。でも、投手が良かったので野球になった。

 佐々岡 だから、後ろの重要性を考えて新外国人を2人獲ったんだけどね。彼らがどう機能してくれるか。

 金本 ただ3連覇した時は、投手が打たれても終盤にひっくり返したからね。今年も野手の方は楽しみが多い。他のチームとは振りが違う。新外国人のピレラも化けそう。

 佐々岡 バッティングは…ね。真面目に一生懸命やる選手。全力疾走もするし。

 金本 カープらしい外国人選手ですね。ポジションは外野?

 佐々岡 サードをやってくれたら一番いいんだけど、ちょっと不安がある。外野なら生き生きしている。

 金本 誠也がライト、センター西川。ピレラがサードに入った場合のもう1人は?

 佐々岡 野間か長野よ。高橋大もいいアピールしているからね。

 金本 (人材が)いるよねぇ。野間なんて、ひと皮剥けたらスゴい選手になる。足はあるし、守備力も。

 佐々岡 ピレラが外野なら、サードは安部か小園。小園は春のキャンプから打撃に力強さが出てきた。まだ高卒2年目だけど。

 金本 小園は我慢のしがいがありますよね。使いながら、1カ月終わって2割2~3分だったとしても、我慢のしがいがある。育てないとアカンしね。

 佐々岡 うん。

 金本 ショートは田中広ですか。

 佐々岡 いろいろ準備はしているけど、今年はやってくれそうな期待感がある。選手会長としてチームをまとめ、しっかり引っ張ってくれているし。

 金本 (昨夏に)手術しましたよね?

 佐々岡 右膝ね。

 金本 膝は後遺症が出るケースがありますからね。サード、ショートを逆に…という考えはないですか?

 佐々岡 何かあれば考えるけど、今のところはない。広輔が元気で動けるうちはショートをやってもらう。

 金本 打撃といえば坂倉もいいですね。

 佐々岡 会沢が全試合出られれば一番いいんだけど、出られない時は坂倉を使いたい。会沢がフルに出る時は左の代打もある。

 金本 僕の(東北福祉大の)後輩の石原慶はどうですか? ジョンソン専属の。

 佐々岡 今年はジョンソンの時も会沢で行こうと思う。スタートは。ジョンソンと組むこともだけど、石原慶にはあれだけの経験があるんだから、ベンチにいるだけで違うし、欠かせない。重要な選手なのは変わらんよ。

 金本 打順は(1番から)田中広―菊池涼―西川―誠也―ピレラですか?

 佐々岡 できれば野間を1番に固定したかったんだけどね。ピレラが外野に入るなら、(1・2番は)広輔―キクで収まるのかな…と。攻撃型にする場合は2番・ピレラもある。そうすればキクを下位の方で自由に打たせられるけど、個人的にはキクに2番打者として嫌らしさを発揮してほしいと思う。

 金本 菊池涼にはもう少し打ってほしいですよね。去年の打率が・261で一昨年が・233かな。10本以上ホームランを打てるし、能力はあるんだから。もう1回、ふんどしを締め直して。

 佐々岡 2番打者に徹してくれれば…ね。

 金本 (阪神の監督時代に)一度、小野が先発した時に2球で2点取られたことがある(17年8月2日)。マツダで。初球を田中広が中前打して、菊池涼も初球をライトへ2ラン。試合開始2分で2球で2点。何それ…みたいな(笑)

 佐々岡 (笑)

 金本 僕は、菊池涼がバントしてくれたら助かったね。打線がつながって無死一、三塁で丸(巨人)、誠也を迎えたらどうすんねん。3点は覚悟しないといけん。1点はやるやる。頼むからバントして1点で終わってくれ…みたいなね。

 佐々岡 バントすればそうなるね。

 金本 矢野監督もそうだけど、僕は2番に打たせたかった。だから、足が速くて併殺の少ない打者。飛球さえ上げなければ(一塁走者が)入れ替わって盗塁があるし、相手投手も嫌だろうから。

 ――今春のキャンプでは右打ちや、去年はなかったエンドランなどの練習を重ねました。

 佐々岡 相手投手の兼ね合いもあるけど、先に点が取りたい時は当然考えられるよね。

 金本 ま、作戦は出しやすいと思うよ。みんな(優勝)経験者で器用な選手が多いからね。バントにスクイズ、セーフティースクイズ。ヒットエンドランも(バットに)当てよるもんね。野手は技術があるから、足を絡めてエンドランとか、いろんな攻撃ができる。面白いと思うね。

 佐々岡 (苦笑)

 金本 逆はないですか? 菊池涼1番、田中広が2番。

 佐々岡 そこは考えてないね。ただ、今の時代は2番に実力者を置く。坂本(巨人)や筒香(DeNA―レイズ)とか。そういう野球になっている。

 金本 しっくりこんけどね(笑)

 佐々岡 僕らの時代の2番と言えば小細工ができる打者。バントしないから、そういう布陣なんだろうけど。

 金本 要は(その打者が)何番で生きるか…よね。何度も言うけど、野手は経験者が多いから楽よ。みんな対応するもんね。菊池涼、田中広、会沢もそうでしょ。安部だって経験があるし、松山、鈴木誠也でしょ。

 佐々岡 誠也の後の5番を打つ打者がポイントになる。誠也は相当にマークされる。となれば、誠也を歩かせて5番勝負というケースが出てくる。

 金本 投手の右、左にもよると思いますけどね。左腕の場合、5番に左打者がいたら誠也を歩かせて左対左勝負が濃くなる。

 佐々岡 候補は左の松山、西川あたりなんだけど、松山が3軍調整になったので…。左投手(が先発)の時はピレラの5番もある。

 金本 (左腕先発時に)誠也を生かすなら、同じ右打者を後ろに置く方が歩かされる確率は減る。僕にも経験がある。(右腕先発時は)後ろに左打者がいる方が歩かされにくい。最も歩かされなかったのは、桧山(進次郎)が絶好調で5番に入った時。全部勝負だったもん。僕を歩かせても次にまた左打者がいるから。左投手は当然、僕と勝負だし。

 佐々岡 まぁ、そうなるよね。

 金本 ただ後ろが新井(貴浩)の時だけは(左腕先発でも)ほぼ四球やった(笑)

 佐々岡 (笑)

 金本 5番に(ルイス)ロペスとか、今岡(誠)とか。ジグザグ打線を組むと、右投手は(4番を)歩かせたくなるんよ。

 ――勝負強さで言えば会沢ですけどね。

 佐々岡 うん。ま、でも、会沢は5番じゃなく、理想は7、8番で打たせられる打線を組みたいよね。そうなると強いと思う。

 金本 西川は1番じゃなく中軸ですか?

 佐々岡 3、5番かな。去年よりも今年は飛距離が伸びた。

 金本 体も大きくなった感じですね。

 佐々岡 そう。パンチ力もあるしね。去年は16本だったけど、今年はひと皮剥けて20本打つ雰囲気がある。

 金本 バッティングは別格のものを持っていますね。バットコントロール。アクロバティックな打者よ。

 ――悪球にバットが止まるようになれば。

 金本 そこが彼の良さでもあるからね。ボール球を打つ。今岡みたいに悪球を。

 佐々岡 それをヒットゾーンに運ぶからね。しかも、高めも低めも両方打つ。

 金 本 あれは絶対に良さです。ボール球を振るな…と言う方が多分打てなくなる。

 佐々岡 その意味でも(見極めを求められる)1番よりも3、5番の方がいいと思う。

 ――金本さんは、監督経験者として“選手を信頼しても、信用し過ぎてはいけない”と助言されていました。

 金本 信用し過ぎてはいけない…というのは、期待をかけ過ぎてもいけない…という意味もあるんです。コイツは絶対にやってくれる…と信じて使い続けても、思うように成績を残せないことが当然にある。ま、でも、カープの場合、野手は素材の宝庫だから。信用できるまでに2、3年かかるかもしれないけど、それくらいの選手はいるからね。

 佐々岡 だから投手よ。今までコーチとして投手しか見ていなかったから、見る目がやっぱり野手よりも厳しめになる。だから、カネの今の言葉がそのまま当てはまる。

 金本 し過ぎてはいけないんですよ。

 ――開幕が6月19日に決まりました。今季のカープの順位はどうでしょう。

 金本 これねぇ…でも、2年連続で全部当てたもんね。1位から6位まで全部。

 佐々岡 エッ? 昨季のカープの4位も当てたのか?

 金本 昨季のカープは2位(予想)。

 佐々岡 当たってないよね(笑)

 金本 いろいろあったから(笑)

 佐々岡 今季の優勝はどこなん?

 金本 どのチームも戦力が落ちとるもんね。巨人は山口、ベイ(DeNA)は筒香、ヤクルトはバレンティン、阪神はジョンソンがいないでしょ。

 佐々岡 ウチはさほど落ちていない。

 金本 そう言えばそうですね。

 佐々岡 ただ、他球団は抜けた主力選手の分を補強している。

 ――外国人次第のところがありますね。

 金本 だから、今季は全チームにチャンスがあると思います。飛び抜けた戦力のチームがないからね。よく見ているでしょ。

 佐々岡 何を言うとるん。適当よ(笑)

 金本 僕の情報量を知らないな(笑)。ま、でも、佐々岡さんには頑張ってほしいですね。激務なので体調に気を付けて明るい話題を提供してもらいたい。期待しています。

 佐々岡 うん。新型コロナ禍は終息していないので楽観できないけど、開幕を楽しみにしてくれる人たちのためにも、V奪回と日本一を目指してチーム一丸で頑張ります。

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2020年6月2日のニュース