【内田雅也の追球】阪神打線 難敵には「勇気」と「読み」が必要

[ 2016年6月19日 09:45 ]

<神・ソ>7回無死、福留は中飛に倒れる

交流戦 阪神0―1ソフトバンク

(6月18日 甲子園)
 阪神打線はソフトバンク先発の千賀滉大に8回で13個、9回にサファテにも1個の14三振を喫した。多くはボール球を振っての空振りだった。

 「ボールを最後まで見ろ」「ボールから目を離すな」と言いたくなる。よく耳にする言葉だ。

 だが、実際に投球を最初から最後まで見て打っている打者はいないという事実がある。投球をとらえる打者の視線の動きを調べると<実験結果は驚くべきものでした>とマイク・スタドラー『一球の心理学』(ダイヤモンド社)にある。<ホームプレートの手前では(ボールを)完全に見失っているのです>。

 では、どうやって打っているのか。<どのポイントにおいて、バットでボールを打ち返すのか、その場所を推測しなければいけません>。打者は投手の手からボールが離れ、速球か変化球かを推測して打つのである。

 だが、この日の千賀やサファテのように、速球が150キロ以上、鋭い変化球がある投手の場合、より早く振り始める必要がある。速球と推測した球がフォークという結果にもなる。ボール球フォークに空振りを連発した道理である。

 球種の判断が難しければ高低で絞る手がある。敗戦後、阪神監督・金本知憲が話した「低めを見極める勇気。見逃し三振を取られてもいい」である。低めはボールになるフォークの可能性があるため捨てる。割り切って考えることだ。

 だが実際、低めフォークを見送れたのは、手元のスコアブックで数球しかない。見逃し三振はともに低め速球が決め球だった伊藤隼太と高山俊の2個。10球粘った高山の打席が一つのヒントか。

 残るヒントは福留孝介の打撃に見える。左中間後方に放った飛球2本は快打に近かった。あれはなぜ打てたのか。

 大リーグ「最後の4割打者」テッド・ウィリアムズが<バッティングの正否の50%は“思考”にある>と著書『バッティングの科学』(ベースボール・マガジン社)で記している。つまり次の来る球を予測するのだ。

 <18歳の時の私は38歳の自分と比べて視力、反射神経も優れていた。しかし38歳の時のような思考力はなかった>。39歳の福留も同じ感覚だろう。考えを巡らし、読みを入れて投球を待つ。

 第一級の投手を打つには金本の言う「勇気」と福留が見せた「読み」が必要なのだろう。 =敬称略=
 (スポニチ本紙編集委員)

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