鹿島丈博さん ブランクあっても精神面で成熟 松山はこれからどんどん良くなっていく

[ 2021年7月31日 05:30 ]

東京五輪第8日 ゴルフ男子第2R ( 2021年7月30日    埼玉・霞ケ関CC=7447ヤード、パー71 )

第2R、14番で第3打を放つ松山(撮影・会津 智海)
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 【メダリストは見た 鹿島丈博さん】男子ゴルフの松山英樹(29=LEXUS)が奮闘している。マスターズ王者として大会前から五輪での金メダル奪取を宣言。頼もしい日本のエースに、自身もゴルフが大好きという体操の04年アテネ五輪団体金メダリストの鹿島丈博さん(41)は「思い描いている通りの結果を」とエールを送るとともに、体操競技とゴルフの意外な共通点についても教えてくれた。

 松山選手はコロナの影響で大会前に少しブランクがあったようですが、私の目には落ち着いて集中してプレーしているように見えました。どの競技でもトップ選手は精神面が成熟しているので、ブランクがあってもそんなに影響はありません。感覚的なものが戻っているかどうかだけなので、ラウンドを重ねるごとにこれからどんどん良くなっていくと思います。

 私もゴルフは大好きです。現役時代の終わり頃に遊び半分で始めたのが最初で、今でもたまにラウンドしています。トーナメント大会もテレビでよく見ますし、マスターズで松山選手が優勝した時は本当に感動しました。

 体操とゴルフは全く関係がないと思うかもしれません。確かに使う筋肉は全然違います。でも、自分の中でイメージをつくって、そのイメージ通りの軌道を出すという点では共通点があると思うんです。メンタル面に引っ張られることが多いという点でもよく似ていますよね。

 ゴルフは自然の中で行われる競技とはいえ、この暑さの中でプレーするのは本当に大変だと思います。暑い上に湿気も多いし、こんな環境でラウンドすることはプロの皆さんでもそうそうないことなのではないでしょうか。ちなみに、屋内競技の体操は天候には左右されませんが、湿度は重要です。空気が乾燥していると滑りやすくなってしまうんですね。海外に行くと日本よりも湿度が低いので、器具を触った時の感覚が違うんです。ほんのちょっとの細かいことなのですが、それを計算した上で演技しなければならないので、湿度に関しては気を使いました。

 4日間競技のゴルフはミスをした時の気持ちの切り替えがとても大切なような気がします。前の1打を引きずると、もろに次の1打にも影響しそうですからね。体操でもミスを引きずる選手がいますが、強い選手ほど引きずらない。私自身も現役時代にミスをした時は、とにかくすぐ次のことに集中するように心掛けました。反省は後でもできるので。

 今回体操の個人総合で優勝した橋本大輝選手もそうでした。つり輪でのアクシデントを引きずらず、すぐに気持ちを切り替えて次の演技に集中できたからこそ、金メダルを獲ることができたのだと思います。狙っていった中で狙った通りに勝ったのですから、本当に素晴らしかったです。

 各組の選手が整列して国名と名前を呼ばれてからスタートするのもゴルフでは珍しいのではないでしょうか。私も日の丸をつけて演技をするときは、国を代表していることの重みや、今まで積み上げてきたことの重みを感じながら演技をしていました。ゴルフは団体戦ではありませんし、プレーしている選手たちは基本的には自己の出来を競っているのでしょうが、やはり国を代表しているという重みは感じているに違いありません。

 今回の五輪はいろいろと制約があって、選手は本当に大変だと思います。どんな状況でも競技に集中するのは選手として当たり前のことですが、リフレッシュも競技の一環なんです。バブル方式で家族や友人にも会えず、自由に外出すらできない。競技を離れてしっかりリフレッシュしなくてはいけないところで自由がないのは周りが思っている以上につらいでしょうね。

 プロのゴルフ選手にとって「五輪」がどういう位置づけなのか分かりませんが、ぜひ思い描いている結果が出せるように、私も残り2日間、一生懸命応援したいと思います。

 ◇鹿島 丈博(かしま・たけひろ)1980年(昭55)7月16日生まれ、大阪府大阪市出身の41歳。3歳で体操を始め、中学3年時に全日本選手権のあん馬を史上最年少で優勝。04年アテネ五輪では団体総合で金メダル、あん馬で銅メダルを獲得。08年北京で団体総合銀メダル。同年引退後は大東大専任講師、日本体操協会のロンドン五輪強化本部委員。現在は全国各地で体操教室を開催し、スポーツの楽しさを伝える活動を行う。

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