萩野6位 いつもなら“遅い”と思う1分57秒も「一番幸せな五輪」

[ 2021年7月31日 05:30 ]

東京五輪第8日 競泳男子200メートル個人メドレー決勝 ( 2021年7月30日    東京アクアティクスセンター )

男子200メートル個人メドレー決勝、レースを終え健闘を称え合う瀬戸大也(左)と萩野公介(撮影・小海途 良幹)
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 男子200メートル個人メドレー決勝は萩野公介(26=ブリヂストン)が1分57秒49で6位、瀬戸大也(27=TEAM DAIYA)が1分56秒22で4位だった。ともにメダルを逃したが、ライバルとのレースを満喫した。

 1秒でも長く至福の時間を味わいたかった。1分57秒49は、16年から保持する日本記録より2秒42も遅い。メダルにも届かなかったが、萩野は「夢見心地というか。いつもなら“遅い”と思う1分57秒だけど、今回は長くてよかったなと思う。何よりも大也と泳げたし、いい一日だった」と実感を込めた。

 開幕1カ月前。長野県での合宿中に異変が起きた。不安と重圧で部屋から出られなくなり、午前4時に平井コーチに「眠れません」とLINEした。精神的に不安定になり、急きょ1日オフをもらい、妻で歌手のmiwaと1歳の子供を呼びリフレッシュ。日本水連幹部が合宿地入りして棄権も検討される中、何とか持ち直した。

 15年6月に自転車事故で右肘を骨折した。保存治療で乗り切り、16年リオ五輪は金、銀、銅を獲得。1カ月後の右肘手術が苦悩の始まりだった。患部にしびれが残り、記録が低迷。レースに恐怖心を抱くようになった。19年2月の大会でメンタルが崩壊。休養に入り、1カ月近く海外を放浪した。3カ月後に練習を再開したが、トレーニングは順調でもレースで力が発揮できない。本番用水着をはくと体がガチガチになるイップスに陥った。

 決勝前、平井コーチから「身も心も解放しろ。自分の泳ぎたいように泳げ」と言葉が飛んだ。第2泳法の背泳ぎでギアを上げる前半から飛ばすレースを展開。終盤にバテて3大会連続の表彰台を逃したが「自分で決めたレースをできた」と悔いはなかった。「順位は悪いが一番幸せな五輪。水泳を続けて本当に良かった。支えてくれた人に感謝し、僕自身にも“ありがとう”と言いたい」。必死に前を向き走ってきたが、立ち止まり後ろを見て気付いた。メダルより大切なものがある。

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